2005年09月09日

あかね雲

山本一力(文春文庫)。

山本一力の出世作(第126回直木賞受賞)。決して人が悪いわけではないがお互いうまく行かない家族、という地味なテーマを地味なまま面白く読ませてもらえた。多少、ご都合主義的な展開はあったけれど。

冒頭の、京から出てきた豆腐職人と豆腐職人が住むことになった長屋住人(ともに主な役どころ)の会話がいきなり泣かせる。冒頭のそのシーンで強調されているように、基本的にはみんないい人なのだが、しかしなぜかうまく行かない、というあたりのリアリティは、たくさんの人に感じてほしいものと思う。そうすれば、世の中にもう少し小さい平和が増えるはずだ。

そういう地味なテーマを伝えるのに、小説はよい箱だと思う。映画などでは役者の演技力が却って伝達すべきことの邪魔になるからだが(登場人物にある程度の匿名性、というか「どんな人物か想像できる余地」が必要と思う)、その意味で、作者はよくぞ小説家になった、という気がする。
posted by aokiosamublog at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍/読書
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