中宮祟著。文春新書。タイトルからも想像できるように、筑紫哲也とNEWS23(TBS系)を、皮肉を込めた筆致で、徹底的に批判する一冊。筑紫哲也とNEWS23の反日偏向報道振りを、「前の夜に録画しておいたNEWS23を、ニュース項目などを中心に文字起こしし、重要な映像はキャプチャしてパソコンに保存した上、他局の同種のニュースと比較しながら検証」(序より)して、滅多切りにする。
例証の分量はものすごい(あとがきによれば「取り上げたかった材料のうちの一割も盛り込めていない」そうだが)。多少偏向?気味に筆が滑るところもあると思ったが、この例証の量の前には、さほど問題にはできない程度だ。
いろいろな意見を持たれる本だと思うが、筑紫哲也ってなんか変じゃねえか? と日頃思っている人には、その例証の分量に触れるだけでも、大変面白く読める本であると思う。私はかなり前にさっさとNEWS23を見るのを止めてしまっていたのだが(だってなんか変なんだもん、程度の理由だったが)、自分の知っている範囲だけで読んだ無責任を承知で言えば、おおなるほどー、という感じで面白かった。うーんでも、あの変な感じを笑うために見続ける気にはやはりならないが。
まあでも、ジャーナリストとして自分の名前を張って冠番組まで持っている以上、この程度のことは書かれても仕方なかろう(特に十分書かれるだけのネタを提供し続けているのだから)。ジャーナリズムは社会の木鐸たれといわれ、そして権力を監視する役目を自負してきたわけだが、一方でジャーナリズムは権力に似た力を持てるわけだから、ジャーナリズムに対する監視もまた必要だ。
で、近年その役を買って出たのがインターネットでの自由かつ玉石混交の発言群、という流れがあるわけで、そういう流れと密接な関わりを持って執筆されたという意味では出るべくして出た一冊、と思う。もちろん、普段からインターネット上の様々な情報、発言を自分なりの尺度で読みこなしている人にとっては釈迦に説法だろうし、こういうアプローチでの論考が(この本のように)旧来の出版という形を今後も採るかどうかはわからないが、なにか同時代的な要素を感じる一冊であった。
ところで、ここまで叩かれて筑紫哲也とNEWS23はどう出るのかな? この本以前に、著者も参加している『筑紫哲也「妄言」の研究』(別冊宝島Real)という一冊もすでにあるわけだが。NEWS23は見ていないのでわからないが、少なくともオフィシャルサイトでは(筑紫本人、番組、そして視聴者からも)反応がないようだ。キャスター陣がお勧めの本を紹介する「コレヨモ。」(このタイトルのセンスが嫌だなあ)のコーナーでも−もちろん−推薦されていない。
だが、こういう批判を受けたことに対する権力とジャーナリズムに行動の違いがあるとすれば、少なくともジャーナリズムは、社会の木鐸を自負してきた以上、自己相対化の誠実な努力を最大限すべきではなかろうか。というわけで筑紫哲也とNEWS23がどう出たのか知りたいのだが、今のところどういう動きになっているのか、全然わからない。番組見ていない以上、差し当たって(飽きて忘れてしまうまでは)インターネットを検索し続けてみるしかないな。
参考URL)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B923
http://www.tbs.co.jp/news23/main.html
http://www.interq.or.jp/world/mado/
2006年02月28日
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