前日のブラック毒演会の帰り、演芸ホールで明日誰が出るのか尋いたら志ん駒が出るというので、浅草に一泊して見物することにする。主任が小朝で日曜日、大入りに違いないので、朝から並んで前座から観た。その前座、駒春の「手紙無筆」は落語以前にマクラから噺に入るところではらはらさせられるような出来だったが、この駒春、三代目桂三木助の孫(四代目の甥)だそうだ(落研上がりの前座かと思った)。知らなかった。そういう育ちを全然感じさせないところが、可笑しいといえば可笑しい。
サラブレッドついでにいえば、この日は正蔵と、木久蔵の息子のきくおも高座に上がった。正蔵は新作の「読書の時間」で、父親が「龍馬が行く」のカバーをかけておいたポルノ小説を息子が学校の読書の時間に朗読してしまう、という噺だが、全体的に面白いし十分笑えるものの、エロの部分の深みがなかったのは残念。ぬるい。昼の部だし、日曜で団体客がいたので加減したのか、それともこんなものなのか。まあ、育ちのよい日向育ちの芸人がいてもいいか。
駒春とは逆にひと目で落語家の息子とわかりやすいきくおは「幇間腹」で、若旦那はできるが(というか、本人そのまんまかな?)幇間が今ひとつ。ただこちらはまだ若いし、二世の生意気な感じが結構いい感じなので、ひょっとしたら今後化けるかもしれないと思った。
さて、お目当ての志ん駒は、ぽんぽんといい間でなんの中身もない与太話(お得意の海上自衛隊・内弟子時代の漫談)。なんだかよくわからないまま笑わせられ、あとに何も残らず、すべて忘れる。すごいなあ。江戸っ子っぽいが、埼玉は川口出身である(同郷の蜷川幸雄をさんざんネタに振りながら、ものすごくくだらない落とし方をする)。
その志ん駒だけで今日は満足だったが、ほかにも、(経歴が意外な)明石寿々栄の江戸端唄、順子・ひろしの漫才(あしたひろしはなんと84歳の重鎮であるが、ヒロシの真似などをして笑いを取るところがすごい)、種平の新作(題名不詳だが、居酒屋の亭主と客のくだらないやり取り。「もずく酢レーニン主義」という駄洒落にはまる。軽さ、中身のなさは志ん駒に通じる?)を堪能。あと扇橋の「二人旅」は、噂には聞いていたがアンコ入り都々逸の回しっこののち唐突に「どうしてお空は青いの〜」という童謡みたいな歌を歌って終わる。なにがなんだかわらないが可笑しい。観といてよかった(観ないとこの可笑しさはわからない)。
昼の部主任の小朝は新作「こうもり」で、羽根を痛めたこうもり=吸血鬼が恩返しをするという噺。いうまでもなく面白いし下げも軽くてきれいだが、ちょうど期待通り。安心して聴けるわけだが、それだけだと物足りないという風にも思う。
昼前から約5時間弱。あー疲れた。出演(出順)、演目は以下のとおり。
金原亭駒春/「手紙無筆」
春風亭栄助/漫談
三遊亭多歌介/小噺
アサダ二世/奇術
入船亭扇橋/「二人旅」
柳家ろべえ/「初天神」
あした順子・ひろし/漫才
林家久蔵/「穴子でからぬけ」
古今亭志ん駒/漫談
明石寿々栄/江戸端唄。「奴さん」「東雲節」「見世物小屋」とあとひとつ(曲名失念)。
鈴々舎風車/「転失気」
桂文楽/漫談(ちょうど団体客が入った所為か、めちゃくちゃ手抜き。いわゆる「アシ」であった。気持ちはわかるが、文楽の名が泣くぞ?)
柳家とし松/曲独楽
林家正蔵/「読書の時間」
(中入り)
林家二楽/紙切り(正楽と同じといえば同じだが、人柄は違うし、こちらはこちらで楽しい)。
林家きくお/「幇間腹」
林家種平/題名不詳(居酒屋の亭主と客の会話)。
春風亭勢朝/漫談(彦六と柳朝ネタ)
林家鉄平/「ざる屋」
翁家勝丸/太神楽(わざと下手にやるネタなのか、本当に下手なのかがわかりにくかった)
春風亭小朝/「こうもり」
2006年05月29日
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