たまたま未来派のことを思い出して、ルイジ・ルッソロと彼の作ったイントナルモーリに思い至ったところ、ルイジ・ルッソロが作った騒音楽器のイントナルモーリ(学生の頃はじめてその姿をイラストで見たときは大笑いした)は第二次世界大戦で焼けてしまったが、秋山邦晴の多摩美のクラスが80年代に復刻したことがあるそうだ。そしてその復刻版を、2002年に大友良英ほか5人によるイントナルモーリオーケストラが演奏した音源がCDになっているという(大友良英のJAMJAM日記による。)。で、Ontonsonというショップが扱っているのを発見し、購入。
イントナルモーリという楽器には「機種」があって、このCDで使われている機種は以下の6機種。
・Ululatore(ウルラトーレ)
人や獣が吠えたりうなったりする声。またはサイレンを彷彿させる。
・Crepitatore(クレピタトーレ)
金属音がぱちぱちと弾ける音。乾いた鋭い音。
・Scoppiatore(スコッピアトーレ)
2種類にわけられる。物が破壊したり崩壊する音。またはレース中の自動車の高速時から停止時までのエンジン音の変化。
・Rombatore(ロンバトーレ)
雷鳴の様な爆音が響く。持続的で豊かな音。
・Stropicciatore(ストロピッチアトーレ)
金属が擦れる際に生じる摩擦音。
・Ronzatore(ロンザトーレ)
ダイナモやモーターがうなる様で近代的な作業を思い起こす音。
(CDのジャケットに記載のクレジットより転載)
これらを6台全部使うアンサンブルもあり、1台だけのソロもある。CDのジャケットには各機種の配置図も掲載されており、ヘッドフォンで聴いているとそれぞれの定位でどの音がどの機種だか見当が付くように配慮されている。
各イントナルモーリはそれぞれ意外に気持ちのよい音がする。可愛いといってもよい。あんまり詳しくないけど、70〜80年代にいくつか聴いた、黒板を爪でひっかくような感触のノイズ・ミュージックとは趣きが異なり、妙な暖かみもある。知識抜きに音だけ聴いた感じでいうと、手作りのオリジナル・パーカッションのアンサンブルという印象か。演奏者のひとり大友良英の日記での「その軽やかなアコースティックサウンドは、とても騒音と言えるようなものではなく、むしろ素敵な響きのかそけき音の楽器にすら聴こえて拍子抜けした」という述懐に得心した。
圧巻はSachiko Mという(多分世界でただ一人の?)サイン・ウェイブ奏者がひとりで6台全部を奏でる2曲目の「Intonarumori」。なにせひとりで6台すべてを回りながら演奏するわけだから、5分強の演奏時間の中に無音状態と各1台ずつの音が交互に現れる。騒音の持つはかなさを感じさせられる名演といえよう。ほんとか。
と書いている間に、ようやく全曲聴き終えた。やはり私にとっては、極めて真面目に実行される手の込んだ冗談のような音楽である(褒め言葉のつもりです)。ライブ録音なので、一曲終わるごとに拍手が鳴るのだが、それもまた意外な感じで楽しい。演奏の様子も知りたいと思った。ライブ観たかったなあ。
2006年11月25日
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