坂東玉三郎監督(1992年作品)。泉鏡花原作。上野・一角座にて。観ようかなと思ってどんな話だったっけ、と検索してみたら、 青空文庫がテキスト入力したPDFを発見。短い作品なので先に一読してから映画を観る。
過剰な描写・演出を排した美しい映像ながら、原作の描写の虚を突かれるような鮮やかさ、心地のよいスピード感には敵わなかったと思うが、高峰医師(加藤雅也)と貴船伯爵婦人(吉永小百合)が九年前にたった一度だけ目を見交わしたが故の恋を成就せんと外科室(手術室)で繰り広げる一瞬の火花のようなシーンは、(吉永小百合が苦手な私にも十分)エロチックだった。
また冒頭に原作にはない白蛇のエピソードをあしらい、やはり原作には登場しない小石川植物園の老園丁(らしき人物)を登場させることによって、原作にはない少しウェットな感じを醸し出していた点で、映画化した意義を獲得していたように思う。
ちなみにその小石川植物園の老園丁(らしき人物)は、新派の伊井義太朗という俳優が演じており、植物園のベンチに腰掛けて主人公の画家・清長(中井貴一)の話を俯きながら聞いているだけの芝居に妙に涙を誘われたので注目したのだが、奇しくも今年の10月に亡くなったとの由。
2006年12月08日
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