2007年03月20日

「日本美術が笑う」展(3月20日)

いや、展覧会(六本木ヒルズ・森美術館)自体は1月27日から5月6日までやっているのだが、タイトルにわざわざ日付を入れたのは、3月21日で入れ替わってしまう作品を観に、駆け込んだので。ちなみに2月末までしか展示していない作品もあり、その中では特に曾我蕭白の「美人図」(1764〜65年頃)や「仙人屏風図」(1769〜75年頃)を見逃したのが残念。特に「美人図」の、びりびりに引きちぎった手紙をくわえる狂女?の顔の表情と素足の表現は、ぜひ実物を観てみたかった(図録にはもちろん掲載されているが、サイズが記されていないので実際のインパクトを想像しにくい)。

さて、3月20日で期限切れとなる中では、甲斐庄楠音の「横櫛」(1918年)の微笑みが圧倒的だった。写実的だが、夢の中の光景のような作品。役者絵をパッチワークしたような、ぎりぎり趣味の悪い着物のデザインと、紗をかけたような女の白い顔の取り合わせにどきどきする。これ観るだけでも、駆け込んでよかった。

河鍋暁斎の「鳥獣戯画」(1880年代)は、猫は猫又だし狸は木の葉頭に載せて踊ってるしで(ちょうど化けるところか?)、妖怪じみていて素敵であった(もう一枚の、烏帽子冠ったふくろうや木の葉を着た狸とそれに乗られる狐、そして蛙が登場する同じく暁斎「鳥獣戯画」は、閉展まで展示)。

あとは作者不詳という、達磨や寿老人、閻魔大王、鬼婆、地蔵や水子、大黒様や小野小町が、酒を呑んだり笛を吹いたり、蕎麦を打ったり薬味の大根を下ろしたりという「神仏界花見遊宴図」(19世紀)が面白かったぐらいかな。お目当てだった若冲(の期限切れ)は「大達磨図」(18世紀)と「布袋図」(18世紀)のみだったので、駆け込みお得感はそんなでもなかったか。

申し遅れましたが、この展覧会は「笑い顔が描かれた日本美術を古墳時代の埴輪から20世紀初頭の絵画までを通じて紹介」というもの。アイデアは面白いが、企画は壮大過ぎたかな、という印象である。

笑いもわかりやすいピースフルなものが多く、仏像の展示もあったが木喰や円空中心なのが、ちょっとね。国宝や重文のアルカイック・スマイル仏まで取り揃えるのは、まあ森美術館では無理だろうけれども。

だいたい、「日本美術が笑う」というタイトルや宣伝ポスターのセンスはどうかと思う。現代美術の展覧会かと思って、無視するところだった。ちなみに英題は「The Smile in Japanese Art」と素直に付けてあるんだから、変に凝らなくてもよかっただろう。

その辺の六本木ヒルズセンス、森ビルセンス、広告代理店センスみたいなのが、たまらなく嫌だなあ。まあ、この日たまたま「来賓」とかいう馬鹿な西洋人のくだらない団体がやかましくて、しかも携帯電話で話し出したりして、しかも係員がそれを庇うような発言をしたので途中でかなり腹を立てた所為で、余計見方が意地悪になっているのだが(係員も困ってたんだろうとあとで思ったが、そのときは叱りつけてしまった。ごめんね)。

とはいえ、暁斎の「放屁合戦絵巻」(1867年)とか鳥文斎栄之の「三福神吉原通い図巻」(18〜19世紀)といったナンセンスな絵巻物も観られたし(もちろん日によって展示の場面替えありだが、横長の液晶スクリーンで全体を繰り返し鑑賞できる仕掛けが用意されている)、きりがないのでひとつひとうはもう書かないが、作者不詳「病草子 侏儒の図」の物乞いしている小人を子供たちがからかう救いのない残酷な笑いもあったりなど、よく観るとそれなりにバラエティに富んだ収集でもあったので、ひと周り観終わって、満足はした。

3月21日から展示が始まった狩野秀頼の「酔李白図」(李白が赤い顔して酔っ払ってる絵)のほか、4月4日からの曾我蕭白「柳下鬼女図屏風」と若冲「鼠婚礼図」、4月18日からの作者不詳「男女遊楽図屏風」なども面白そうなので、もう一度行くかな。今度は途中で腹を立てないようにしたいなあ。

#若冲の「仔犬に箒図」は4月3日までの展示なので、若冲ファンは急ぐべし(まあそんなにめちゃくちゃすごいという絵ではないけれど)。

#図録は印刷も造本も手が込んでいて立派だけど、2950円は高いよなあ。学生も観に来るんだろうから、一般的な1000円くらいの廉価版を用意してもよいのではないか。まだ森ビルに腹立ててる(笑)。
posted by aokiosamublog at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術
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