いやあよかった。21世紀のビリー・ホリデイとも称されるマデリン・ペルーだが、CDで聴くと確かに「そっくりさん」という側面も印象に残るものの、ライブで聴くと要は「声質がよく似ている」ということだけだということがよくわかった。ビリー・ホリデイ云々とかいわなくても、十分素晴らしいパフォーマーであることを十二分に理解できた。それだけ、(英語本来の意味での)ユニークな歌い手であった。
根底にあるのはブルースで、技巧的なことをいえば語るような歌い方や音の外し方がいちいちツボにはまるのだが、それ以前に、少し粘っこく暖かい歌唱が、歌唱と歌詞とが不可分であること、さらには動物が骨と肉で成り立っていることを想起させるような塩梅である。この場合、歌詞=骨、歌唱=肉、というアナロジーだけれども、変なアナロジーを使わなければ、要はこの人にしか歌えないだろう歌を、たっぷり堪能できた次第だ。
バンド(ピアノ+キーボード、ウッドベース、ドラム、そしてマデリン・ペルーのギターと「Smile」のみウクレレ)も、ほんとに必要な音しか出さない、インテリジェントな感じの演奏である。ミニマルな演奏だから必ずしもいいとは限らないが、この人たちの場合、ブルースやジャズのフリーな感じを、よく練られ計算された演奏によって表現しているという点が素晴らしい。全体的に、演奏が実に緻密にデザインされているのである。使っている楽器は特殊なものではないのに、全体が、この音楽のそれぞれの瞬間にそれしかあり得ない音ばかりで成り立っている。
その分、個々人の技量を見せるような場面が少なく、最初は地味な印象もあるステージだが、曲が進み上のような理解が形成されていくにつれ、徐々に深く感動していく。
その反面、場末のクラブで毎週演ってそうな気安さ(主にマデリン・ペルー本人のローカル感によるものだと思う)があるところも嬉しい。いやほんと、毎週仕事場の近所とかで酒呑みながら聴きたい。
ライブは今日もあるのだが(昨日今日の二日間)、どうしようかなあ。やんなきゃならない仕事もあるし、もう一本観たいライブもあるのだが、まあそのライブのほうは日曜日でも大丈夫なので、仕事抜け出せそうなら今日も観るかもしらん。
なお、演奏曲目は新譜「Half the Perfect World」中心で、アンコール含め16曲。そのうち、(多分)あと2枚のアルバムにも入っていない曲が5〜6曲あったと思うが、もしかしたらアルバム収録曲かもしれない。ちょっと自信がないので、あとでちゃんと調べてみましょう。
2007年04月02日
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