新宿PITT-INNにて。メンバーは吉野弘志(B)、田中信正(P)、藤井信雄(Ds)。割と耳馴染みのあるジャズのフォーマットの上での演奏だが、そこから突き抜けるようなプレイは数限りなくあって、しかし破綻はない、という印象。ピアノとドラムはかなり暴れたり、見たことのない奏法を試みたりするが、それが吉野弘志のベースがほっくりとまとめていくという感じに思った。
一見、個性も経歴もルックスも共通項がなさそうに見え、出す音も三人それぞれが別のことを喋っているようにも見えるので(あくまでもそういう印象ということだが)、各曲の演奏が始まって間もなく、トリオの音がぐわっとまとまって迫ってくる様が、なんだか不思議で面白かった。
個々のプレイヤーに焦点を当ててみると、藤井信雄のドラムが、全曲でなんだか妙に美しかった(打音ひとつひとつの説得力がとても高いと感じた)。09で、手許に置いた酒?のグラスの中の氷がグラスに触れる音を楽音として使うなどの遊びをふんだんに盛り込んでいたところも面白かったな。
05、田中信正がピアノの高音部で奏でる音が、ピアノの音でないような不思議な響きだった。田中のピアノは、三日連続で聴いたが、88の音という楽器の持つ制限事項を、88鍵の内外で解き放って行く、という印象をこの日も強くした。また別の組み合わせやアプローチでも、ちょっと追いかけて聴いてみたい。
以下備忘。01は田中信正、05と06は吉野弘志の曲で(09も?)、06は不動のベースの上でピアノとドラムが好き放題に暴れ、田中がしまいには前衛舞踊のような動きでピアノを鳴らし続けるのが印象に残る。04と07はリー・コニッツの曲で、共にスタンダードのコード進行を利用した“替え歌”(前者の元ネタは失念。後者は「All the Things You Are」)。08は武満徹作曲の、映画「他人の顔」(安部公房原作)のテーマ曲。10はDon Pullen作の、5/4のファンキーなブルース。
01 Footsteps Of Japanese Shorttales
02 Fire Waltz
03 Black Narcissus
04 Dream Stepper
05 ミュータン
(休憩)
06 nbaba
07 Singin'
08 他人の顔のテーマ
09 竹
10 Saturday Night in The Cosmos
enc
11 曲名不明
2009年02月28日
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