2009年03月22日

酒井 俊“Electric Welding Meeting” the second meeting

新宿PIT-INNにて。酒井 俊(Vo)、青木タイセイ(Tb,Key,etc)、太田恵資(el-Vn)、桜井芳樹(G)、松永孝義(el-B)、芳垣安洋(Ds,Per)。会場のホームページでは左記のクレジットだったが、青木タイセイはキーボードのみ演奏(酒井俊の意向との由)。また芳垣安洋もドラムキットのみ。ベースの松永孝義が生み出すグルーブを基軸に、歌も含めた全員がそこになにかを“溶接”していくというのが主旨のユニットのようで、全体的にはレゲエ、R&Bのフォーマットでの演奏という感じだが(大雑把な印象としては。もちろん、曲によって“フォーマット”は様々である)、そこで紡ぎ出されるグルーブは、松永孝義のベースが中心だからだろう、とにかく軽くて柔らかく、しかし、前にぐいぐい進んでいく音楽ならではの心地よさもある。初期の頃のAnnette Peacockのバンドの演奏を思い出したが、あれよりももっと角がない感じか。なにか温かくていいにおいのする液体に浸かっているような心持ちになった。

酒井俊の歌も、ここのところ続けて聴いた田中信正とのデュオと比べると、肩の力が抜けた感じで、手応えも軽い。もちろん、歌の力強さや重さ(メッセージが伝わる強さや重さという意味での)は変わらないが、表面的な手触りは優しい感じがした。その歌が、上記のような演奏の上で転がっていき、次第にくるまれて馴染んでくる、というのが、このユニットの試みの面白さだろうか。

青木タイセイのキーボードは、ほとんどがエレピの音色だったが*、足りないなにかを足していくというのではなく、逆に余分ななにかを引いていくといった趣き。決して音数が少ないというわけではなく、ソロを取ったりもするし、場面によってはリズムを補う機能も果たすのだが、絵画でいえば、絵の具を厚く塗り足してキャンバスの空間を埋めるのではなく、絵の具は塗るがそれが空間を作ったり光や空気を生み出すという感じだった。このユニットの主旨には、かなり重要な役割を担っていたのではないかと思う。

*08のみ、全編クラビネットの音色だったが、ソロの最中にキーボードの操作パネルの上に置いた譜面が落ちるのを防いだとき、なにかボタンを押し誤ってエレピの音に切り替わってしまうというハプニングがあった。

あと、特に02で顕著だったが、聴き慣れた6/8のリズム中で桜井芳樹と青木タイセイが他の演奏者とは違う(と聴こえた)グルーブでの演奏を試みていて、しかしそれが全体としてははみ出しているわけではない、といったところも、とても面白かった。それは、芳垣安洋のお馴染みの超絶的なドラムにも、太田恵資のさりげなく色彩豊かなヴァイオリンにも、場面場面で同様の感想を抱いた。

個人的にはなにか引っかかりがあるほうが面白いと感じるので、ステージが進むにつれ02のような印象が薄れていくのは少し物足りなくもあり。ただしステージ全体としては、そういう要素もくるみ込む形で、終盤に向かってとてもいい感じに耳障りのよいジャズ-ポップの演奏になっていくのが面白くもあった。

メンバーが大変忙しいということで、頻繁なライブは難しいとのことだが、いい感じにリラックスさせてくれる音楽なので(これを「リラックスさせてくれる音楽」と評することができるのは、大変贅沢なことではある)、定期的に演ってもらえると有り難いと思う。

#03でのメンフィス・ソウルっぽいプレイや、15での土臭いスライドギターなど、桜井芳樹の演奏に感銘を受けたのも、今回の収穫。やはりLonesome StringsのCDは、ちゃんと入手して聴いておこう。

以下、この日のセットリスト。

01 Everyday Will Be Like Holiday
02 What a Wonderful World
03 Crazy Love
04 The Look Of Love
05 Summer Time
06 四丁目の犬
07 ヨイトマケの唄
08 曲名不明
09 I Shall be Released
(休憩)
10 Lean On Me
11 Fragile
12 かくれんぼの空
13 Just Like a Woman
14 Song for You
15 Amazing Grace
16 At Last, I'm Free
17 Hallelujah
18 Wonderful Tonight
enc
19 満月の夕

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一部、ちょっと言葉が足りない気がしたので、補足。

>そこで紡ぎ出されるグルーブは、松永孝義のベースが中心だからだろう、とにかく軽くて柔らかく

松永孝義はご存知ミュートビートのベーシストだった人だが、ミュートビート時代は、もちろん図太くて重く響くベースを弾いていた(確か、あまりに重く響くので?、ライブに一緒に行った友人が、観ている最中に腹を下して退席した記憶がある)。

今回はその記憶に反して、非常に柔らかく軽やかなベースだったのだが、このライブでは松永孝義がリードする形で演奏が始まり(01はベースイントロ)、そのベースの柔らかく軽やかな手触りに呼応するようにグルーブが育まれていったので、上記のように記した次第。

以上、補足でした。
posted by aokiosamublog at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(ライブ)
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