6/17、渋谷公園通りクラシックスにて。酒井俊(vo)、中尾勘ニ(ts, tb, cl)、桜井芳樹(g)、関島岳郎(tu, recorder)、岡部洋一(per)。01 The Red Valley
02 Home On the Range
03 Yes, We Have No Bananas!
04 四丁目の犬
05 ヨイトマケの唄
06 黒の舟歌
07 Oh My Darling, Clementine
08 I Shall Be Released
(休憩)
09 見上げてごらん夜の星を
10 十九の春
11 買物ブギ
12 Wild Irish Rose
13 Shenandoah
14 かくれんぼの空
15 At Last, I'm Free
16 Hallelujah
enc
17 満月の夕
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01が、岡部洋一の軽快なカウントでBPM90くらいの8ビートで演奏されたのに意表を突かれる(ハイハットとカホーンのみを基軸に、素晴らしい8ビートを形成していた)。関島岳郎のチューバによるベースライン、桜井芳樹のいい塩梅にロックンロールなギター(ギターソロを3コーラス分も披露)、中尾勘ニのテナーサックスがまた絶妙。聴きながら知らずに笑みがこぼれる。そこに酒井俊の、いつになく軽やかな歌が乗り、この夜の空気が一気に作られた。
13(これまたいつもとは違う、軽快な2ビートでの演奏)を歌い終えたあと、酒井俊がぽつりとジョン・フォードへの愛着を口にしたが、今更ながら、20世紀アメリカ発の大衆文化/大衆音楽の持つ魅力を深く、また多角的に考え抜いた結果の音楽であり、それが毎回心動かされる理由のひとつなのかもしれない、と、この日の演奏曲を聴きながら漠然と考えていた。例によって思いつきで、ちゃんと考察したわけではないが、この日は、アメリカのストリング・バンドやフォーク音楽を知り尽くした桜井芳樹がギターだったことが、そうした思いつきに拍車をかけてくれたと思う(昨日の松島啓之のトランペットにも、同じような効果を与えられたかもしれない)。
軽快、というキーワードで言えば、ユーモアすら湛えた05の軽快さには、6/12のなってるハウスで聴いたときよりも心動かされ、涙が出そうになった。ユーモアの部分は主に桜井芳樹のギターが醸し出し、他の3人(中尾勘ニはトロンボーンを演奏)がなんというか、大地を叩いたりアスファルト臭い土埃を上げたり、といった印象を醸し出す。その印象と歌詞の内容からの単純な発想だが、きつい肉体労働の中で生まれる笑いや軽口の持つ深い味わいみたいなものを想起したのが、涙が出そうになった理由のように思うが、そんな個人的な感慨はともかく名演。
あと、久々に聴いた09の歌の美しさに感動したのと(冒頭のチューバと歌のデュオの部分で引き込まれたが、その後歌の背後で展開されるチューバとトロンボーンのアンサンブルがまた美しい)、このメンバーできっちりと演歌が演奏された10が面白かったことを忘れずに書いておく(岡部洋一は導入部ビリンバウを使用。関島岳郎がやはり導入部でリコーダーで、中尾勘ニがクラリネット)。ちなみに10は、イントロからして素晴らしく、酒井俊自身がイントロに聴き入ってしまい、歌い出すのを忘れてしまったほどだったのが可笑しい。あと4番か5番くらいで「恋に焦がれて鳴く蝉よりも〜」という都々逸の一節が挿入されたのが、田端義夫などのバージョンと違っていたかなと思ったが、どうだったろう?
いやしかし、今回は歌はもちろん、細かく書けばきりがないほど、すべてが素晴らしかった(15のみ、編成的にあとひとつアタックが強くて音量がでかい低音があるといいのかなーと思ったくらいか)。毎回いろいろな演奏者の組み合わせでその歌を聴かせてもらい、いろいろな感銘を受けているのでこう書くのは気が引けはするのだが、もし今後ユニットを数組に集約していくようなことがある場合は、今日の組み合わせはひとつの主軸にしてほしい、とも思ったほどだった。
2009年06月17日
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