2012年11月15日

新宿末廣亭11月中席昼

(初出:Facebook「落語総見」グループ https://www.facebook.com/groups/rakugo99/

2012年11月15日
新宿末廣亭中席昼

私事ながら、先週食事中に誤ってがぶりと噛んだ唇の傷がまだうずく中の寄席遊び、観ている最中どれだけ痛みを忘れるかが笑いと愉悦のバロメーターになったりするかな、という視点で、それぞれの芸を楽しんでみようかと思った。ざっくり言うと、遊平・かほりのいつもの夫婦漫才から、めでたく二つ目昇進の一蔵の「薬缶」、小せん「饅頭怖い」辺りで、一度痛みが気にならなくなったものの、本格的に痛みを忘れたのは圓太郎「浮世床」からか。太閤記の読めなさ加減が鮮やかで、この日の寄席の空気もこの辺りから暖まって来たという感じがした。

が、左橋「時そば」は、なんとなく間の取り方をうまくつかめず、この辺で痛みはぶり返したものの、種平「ぼやき酒屋」、ペー、歌る多「町内の若い衆」と畳み掛けられて、唇の痛いのはほぼ完全に忘れ去った。

「ぼやき酒屋」は、初めて聴いたのが種平のでたいそう面白かったので(もずく酢レーニン主義、などの駄洒落の感覚が好きなのである)、これは同じものを何度聴いても、ある種の刷り込みがあるのかカルガモの子のようにあとを着いて行ってしまう。林家ぺーの、適当な知識をパーパー言ってるだけのような漫談も相変わらず最高。どれだけ考えて喋っているかは知らないが、振ったネタに関する四文字熟語などが微妙に捻曲がって行くところの塩梅はいつも見事だなあと思う。歌る多は、兄貴と熊五郎の女将さんの演じ分けが、女流ということを抜きにしても、とても鮮やかだった。

さて仲入り後も、川柳からホームランの流れは何かが渦を巻いていた感じだったし、馬の助の百面相は大好物なので、概ね痛みは忘れていたが、太神楽での小花がミスが多く、少し鼻白む(なんてないことをやっているときも含め、鞠を3〜4回落とした)。

で、主任の圓丈「前座さら口の夕べ」、ケーブルテレビに「前座専門チャンネル」ができて、前座の高座を中継しながら、アナウンサーと、圓生をモデルにした噺家の解説者が実況するという噺。圓生をモデルにした圓せうの解説が可笑しいものの、私がこのネタを聴くのが初めてということもあるのだろうが、全体的に手探りで、前座が高座中に扇子を落としてしまいそれを楽屋から扇子を送って助けようとするが失敗を続けるという展開などがぎこちなく、話をその場で組み立てながら演っているという印象があって、今ひとつ乗り切れず、結局唇の痛みは元に戻り、昼の部終了。

圓丈の、そういう印象の高座に行き当たるのは、まあこの日が初めてというわけではないし、それはそれで、未だに格闘を続けている姿に感動を覚えはするものの、この日は体調のこともあり、そんな感じで、少しもやもやが残った次第。聞けば末廣亭中席昼に続いて鈴本下席夜と、都合20日間トリを取り続けている最中だという。圓生襲名騒動と前後して、古典をやる機会も多くなったような気もするので、この二十日間、少し追いかけてみようかなと思った。

あと備忘として、小せん「饅頭怖い」は饅頭が出て来る前で了(こういうパターンも「饅頭怖い」という題になるのかな? 不勉強で恐縮です)。林家ぺーは、冒頭で森光子逝去を話題にしていた(ご存命の方の中では原節子と山口淑子が同い年、とか)。川柳はお元気そうだが、最近拝見する度にお痩せになっているように見えるのが気がかり。馬の助「権助芝居」は、「今年のお軽はマツコ・デラックス」というサゲで、百面相は、まあいつも通りと思うが、大黒様、戎様、達磨大師、分福茶釜の狸。

この日の演目は以下のとおり。

林家まめ平・・・・・真田小僧
三遊亭玉々丈・・・・ニワトリ
大空遊平・かほり・・漫才
春風亭一蔵・・・・・薬缶
柳家小せん・・・・・饅頭怖い
松旭斉美智・美登・・奇術
古今亭駿菊・・・・・あくび指南
橘家圓太郎・・・・・浮世床
柳家小菊・・・・・・俗曲
初音家左橋・・・・・時そば
林家種平・・・・・・ぼやき酒屋
林家ペー・・・・・・ギター漫談
三遊亭歌る多・・・・町内の若い衆
(仲入り)
川柳川柳・・・・・・歌は世につれ〜春の甲子園入場曲
ホームラン・・・・・漫才
金原亭馬の助・・・・権助芝居〜百面相
桂文生・・・・・・・無精床
翁家和楽社中・・・・太神楽
三遊亭圓丈・・・・・前座さら口の夕べ
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸