2012年11月16日

新宿末廣亭11月中席昼〜夜

(初出:Facebook「落語総見」グループ https://www.facebook.com/groups/rakugo99/

2012年11月16日
新宿末廣亭中席昼〜夜

「この二十日間、少し追いかけてみようかなと思った」ということで、翌日また昼の部終わり頃から聴きに行った。で、この日の圓丈は「いたちの留吉」。さすがに20年前に作ってちょくちょく演っているネタだけあって話芸は十分練られていて、安心して笑いについていけた。聴きに来てよかった。いくつ行けるかわからないが、末廣亭の残りと鈴本も、もう少し覗いてみたいと思う。

ちなみに、「いたちの留吉」は10年くらい前に一度ネタを練り直して“修正版”と銘打って演ったとどこかで読んだが、それがオリジナルとどう違ってて、で、今日のがどうなのかなどは、私は理解していません。

膝替わりは代演の丸山おさむで、田中角栄の声帯模写は相変わらず見事(ネタも含めて)。あと、オールナイトニッポンのテーマソングの声帯模写から糸居五郎の声帯模写に入り、ノブテル君なる少年からの電話相談を受けて「君のお父さんはまばたきが多いから、世間を半分しか見られてないんだね」というところが可笑しかった。

そのまま居続けで夜。

前座とその次はどちらも女流で、多ぼうは落語というより童話の読み聞かせのような、妙な味わい。美るくは「たらちね」の嫁の台詞回しがなかなか見事だった(本筋の話ではないが、美るくという名前はなんかエロ過ぎやしないかなあと、以前からなんとはなしに思っている)。

落語で一番印象的だったのは菊輔「謎解き千早」で、桐の箱に入った自作の巻物を持参し、それを広げて読みながら、「千早振る〜」の歌の背景を解説したり、いろいろな現代語訳を読んだりするというもの。珍解釈を繰り広げるという点では古典の「千早振る」の改作といってもいいのかもしれないが(ただし八五郎に相当するような聴き手がいるような話の構成ではなく、菊輔ご本人が客席に向かって珍解釈や珍訳を披露する)、ものものしく巻物を広げて、解説なので面白い話はしませんという風ながら面白く話を展開させるところが、なんだか可笑しかった。

それと歌武蔵「小言念仏」、扇子で高座を叩く音がとにかく大きく、見た目と声に迫力があるという一点が、噺に妙に合っていて、これも印象に残った。

川柳「ガーコン」も、昨日に続きいつになく乗ってる感じだったし、他も特に不満があるわけではなく充分笑ったのだが、全体的にはにゃん子金魚の漫才とあした順子の漫談が特に可笑しく、落語よりもそこに気持を持っていかれたような気がしている。

特にあした順子の、出端の数分感の喋りはいつも最高にかっこいいと思う。前座いじり(前座を高座に引っ張り上げて「♫男はあなたひろし〜」を歌い踊らせる)も、毎度の楽しみになってきた。最後に、これも最近お馴染みだが、今は休んでいるあしたひろしが声だけ出演し、ちょっとしんみりさせる(新舞踊「龍馬が行く」の台詞部分。この録音が、療養先で録音したのか、音質があまりよくないのが、また泣かせる)。

あと正楽の紙切り(お客の希望で金魚、スカイツリー、焚き火、末廣亭の落語、のお題を切り、最後になんと自分からミ○キーマウスを切った)がなんとなく神がかってたような気がしたが、気のせいか? 久し振りに観たからかな。でも素晴らしかった。

さて主任の小袁治「笠碁」は、表面的な人情味や感情を押さえた粋な「笠碁」と思った。薄味で物足りないと思う向きもあるかなと思ったが、あの出汁は奢ってるが味付けを押さえたお吸い物のような味わいは、私にはとても愉しかった。

備忘としては、仙三郎社中は仙三郎おひとりのみの出演。小袁治に「社中ってのは大勢でやるって意味じゃないのか?」とからかわれていた。でもおひとりだったので、却ってお顔をじっくり拝めたのはよかった。だんだん日本から失われるであろう、とてもよい芸人の顔だと思う。

この日の演目は以下のとおり。

−昼
桂文生・・・・・・・転失気
丸山おさむ・・・・・声帯模写
三遊亭圓丈・・・・・いたちの留吉

−夜
三遊亭多ぼう・・・・たぬき
三遊亭美るく・・・・たらちね
花島世津子・・・・・奇術
柳亭市弥・・・・・・のめる
春風亭勢朝・・・・・池田屋
すず風にゃん子金魚・漫才
古今亭菊輔・・・・・謎解き千早
林家正楽・・・・・・紙切り
林家鉄平・・・・・・堀之内
川柳川柳・・・・・・ガーコン
(仲入り)
古今亭菊春・・・・・替わり目
あした順子・・・・・漫談
三遊亭歌武蔵・・・・小言念仏
柳家さん八・・・・・柳家小さんの生涯
鏡味仙三郎社中・・・太神楽
柳家小袁治・・・・・笠碁
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸