2012年11月26日

上野鈴本演芸場11月下席夜「冬の新作コレクション in 鈴本」

(Facebook「落語総見」グループと同内容 https://www.facebook.com/groups/rakugo99/

上野鈴本演芸場下席夜

「冬の新作コレクション in 鈴本」と題した番組。その題名のとおり、落語はすべて、いわゆる“新作落語”がかかるわけだが(他の日もそうかもしれないが、前座のみ古典だった)、ますます古典/新作という区別の意味が、まだ潰えたわけではないけれど、かなり薄くはなってきたな、という実感を得た。

同じ実感は、昨年末にSWAファイナルを4公演聴いたときにも感じたけれど、いわゆる“古典落語”を愛でるのは落語愛好者個々人の自由としても(私ももちろん、古典落語は大好きだ)、古典と新作をわざわざ峻別することで、聴き手として得られる利点は今やほとんどないと思う。むしろ、これから聴く噺が古典か新作かをあまりに意識したりするのは、自ら耳を閉じることに等しいのではないかとも思う。

実際、今日ははん治で聴いた「ぼやき酒屋」のような、幾人もの噺家の工夫と実演を経た新作落語には、いわゆる古典と同じような味わいや手触りを感じる。あるいは、今日初めて聴いた天どん「手足」も、「手」という言葉と「足」という言葉が入れ違ってしまったその顛末というだけのナンセンスなネタだから、特に新作だなんだと構えなければ、ただ落語、としてすーっと楽しめる。

トリの圓丈「インドの落日」だって、舞台が明確に昭和だから新作として受け取らざるを得ないわけだが、しかしそこで新作という色メガネを外す術を聴き手が持っていれば、ただいい人情噺としていい気持になることができるのである。

そして実際、程度の差こそあれ、今日聴いた噺はどれもただただ落語として楽しめたーそれだけの芸で以て提供してくれたから、最初に書いたように「古典/新作という区分けの意味が(略)かなり薄くはなってきた」と感じたのではないかと思う。

今日の出演者の中にも、マクラで「これから新作ばかりかかりますけど、大丈夫ですか?」とか「芝浜を聴きたいお客がいたら大変だ」といった話を振った噺家が幾人かいたけれど、そういう気遣いもだんだんと無用になってくるといいな、と思ったし、実際、ゆっくりとでも今後そうなってくるだろうという手応えを感じた次第。

***

備忘としては、ダーク広和の奇術での、ロボット三原則を盾に取った「これならロボットに奇術で勝てる」というネタが面白かったのと(ファンカードの広げ方へのこだわりなども可笑しい)、きく麿の歌と司会と物まねの上手さに感じ入ったのを書いておく。

えーそれと、正楽の紙切りは、最初に相合い傘を切ったあとは、お客の注文で討ち入り、上野ぼたん苑、誕生日。あと、ストレート松浦は翁家和楽社中の代演。ストレート松浦のデビルスティックは、ちょっと真似してみたいなあ。

以下、本日の演目。どちらかといえば割と馴染みが薄いかなと私が勝手に思ったもののみ、簡単に(今後初めて聴く方の感興を削がない程度に)内容を記しておきます。

柳家フラワー・・・・元犬
三遊亭天どん・・・・手足
※「手」という言葉と「足」という言葉が入れ違ってしまった男が手首を捻挫、その治療を頼まれた医者とのバカバカしい会話。「足」は「手」と言ってしまうが、「脚」は間違いを指摘されるとちゃんと言える、というのが妙に可笑しかった。
ダーク広和・・・・・奇術
柳家はん治・・・・・ぼやき酒屋
林家きく麿・・・・・こぶし君ハイパー!
※親が小さい頃から芸事を仕込んだために普通の会話ができなくなった小学生vs臨時担任。宝塚ネタはそれほどでもなかったが、歌謡曲の司会、歌、モノマネ、歌舞伎の声色などが見事。小学生・歌田コブシ君が歌いまくる教室から、コブシ君をそう育ててしまった父母面談への場面転換も、鮮やかだった。
ペペ桜井・・・・・・ギター漫談
柳家小ゑん・・・・・ミステリーな午後
※冴えない係長が、たまたま手にした高級寿司店の飯台を使って、部下のOLたちに昼飯の見栄を張ろうという顛末。寿司ネタを元にした駄洒落の連発に笑った。
三遊亭白鳥・・・・・ナースコール
※出来の悪い新人看護婦みどりちゃんが、宿直時に起こすいろいろな騒動。落ち着いて考えると、話の完成度というか練り具合はそんなによくないような気もしたが、そこも含めて白鳥らしい味わいに、聴いている最中は大いに笑う。
(仲入り)
ストレート松浦・・・ジャグリング
春風亭百栄・・・・・あしたのジョー
※子供の頃に憧れていたヒーローが、同時代の存在だけに、作品には描かれてなくてもその時代ならではの希望や野望を抱いていたのではないか、という発想で、矢吹丈のボクシング引退後に考えている将来設計を描く。少しグダグダな感じの芸は、噺の可笑しさを増幅するための敢えてだと、ちょっと好意的に受け取った。
林家正楽・・・・・・紙切り
三遊亭圓丈・・・・・インドの落日

あ、ちゃんといろいろ探したりしているわけではないが、たまたま11/22のレポートを見つけたので、リンク貼っときます。

http://hirobow.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/20121122-969e.html
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸