2013年01月18日

新宿末廣亭正月二之席

(Facebook「落語総見」グループと同内容 https://www.facebook.com/groups/rakugo99/

新宿末廣亭正月二之席朝11時過ぎに新宿について、ベルクで一杯やってからゆっくり末廣亭に赴くと、すでに並びの立ち飲み屋くらいまでの行列。それほど待たずに入れたものの、木戸が開くや一階椅子席は満員(桟敷も結構埋まった)という盛況ぶりだった。

その後、昼の仲入りくらいには二階も開き、夜まで二階は開きっ放し、桟敷裏の立ち見も出ていた。

で、さて、昼席は、歌武蔵「犬の目」から笑いの渦が起き始め、歌司は何を言ってるかよくわからないけどそのボケ味が妙に可笑しく、しん平は狛犬になってお客に柏手を要請するのがこれまた可笑しく、林家ペーのギター漫談で爆発、という感じだった。林家ペーが最後に「夜霧よ今夜もありがとう」のB面を歌います、と言ってからの「渡哲也とのデュエットで、ほら炊き出し専門の、人畜無害の」というひとくだりがめちゃくちゃ面白かったな(結局歌ったのは「松竹梅」のCMソング)。

ロケット団がいつもと比べて爆発が弱く、花緑の漫談の話のポイントがうまくつかめなかったのが、上記の流れを考えると些か残念ではあった。

正蔵は、父であり師である先代三平に小咄しか教えてもらえず初高座で桂小太郎(のちの四代目三木助)に大きく水をあけられて悔しかった、という話をしていたが、どうもこの人がそういう話をすると、嫌な感じを覚える。今の芸の突き抜け具合等々、先代三平のような芸人を師匠を持った、という話の先の落ちがつかない現状だからかな。

#拙稿をお読みの方で、正蔵のファンがいらしたら、その魅力をご教示願えれば幸いです。どうも反射的に否定的な目で見るようになっていて、自分の鑑賞眼が狭まってやしないかと心配なのです。

大名跡ついでにいうと、仲入り後に出て来た文楽の「六尺棒」の若旦那はどうも品のない感じがして、興を殺がれた。一方小さんは、これまた先代の印象が強いのでどうしても色眼鏡で見てしまうのだが、この日の「親子酒」はよかったな。ちょっと先入見から逃れられたような心持ちになった。

馬風の漫談はいつもどおりの安定感。私は正月以外ではあまり聴かないので、余計ああお正月だな、という気分になって楽しい。

仲入り後は、いきなり若圓歌の暗記ネタの言い立てが見事。その後は誰も楽屋入りしていなかったようで(噺の途中で高座への上がり口から合図の手が見えたので、恐らく本当だろうと思う)、少し噺を引き延ばしていた。

川柳相変わらずの「ガーコン」は、開口一番「今日も歌うよ」でどっと受けたものの、その後客席の反応が鈍くどうなることかと思ったが、軍歌を一緒に口ずさむお客も多く、次第に客席も暖まり、軍歌時代からジャズ時代への転換の辺りからやんややんやという感じになってよかった。川柳は、この日ももの凄く調子がよさそうではあったが(膝もよくなったのか見台も使っていなかった)、見る度に小さくきれいになっていって、少し神様めいて見えるのが心配ではある。

ま、いろいろ書いたが、お目当ての小円歌が見られたので、それだけでも満足。この日は、正月らしい「今年ゃなんだか」の踊りのほかはまあふだん見るのと同じネタではあったが、勢いというか迫力というか、そういうものがちょいと強めだったように思う。ああいつか座敷に呼んでみたい。小円歌がAKB(あした・桂子〜、のほうではない)に入ったら、絶対何票も投票するなー(ウソ)。

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夜席は、前座のあとの馬るこ「大安売り」(相撲噺だが、モンゴル出身の関取の本名を言い立てるだけですでに可笑しい)以降、芝居でいえばダレ場がまったくないような流れで、のんきなはず寄席の正月としては異例な感じだったが、まあそれは私の経験が乏しいだけかもしれない。

それはまああれとして、下記の顔ぶれと演目で、どれだけ満足度が高かったかをぜひご想像いただきたいと思う。一晩経った今でも、ひとつひとつの高座を鮮やかに思い出せるほどであった。

びっくりしたのは猫八・小猫の親子共演で(小猫は昨年3月に襲名したばかりだったかな)、鶯に始まり蟋蟀、蛙(親子)、山羊(親子)、丹頂鶴(雌雄)、盛りの付いた猫(雌雄)、フクロテナガザルの鳴き合わせが見事。ただ見事なだけでなく、共演ならではの妙味と笑いもたっぷりあった。共演は正月だけのようなことを言っていたような気がするが(ちゃんと聞いてませんでした)、ふだんの寄席でもまた聴きたいと思う。

えー、あと、太神楽社中の獅子舞は、獅子舞が鏡味仙三、翁家和小楽、面化(というのかな?)がお顔分からず、お囃子が鏡味仙三郎、仙志郎、翁家和楽、小花、の7名。とても縁起がようございました。

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ということで、末廣亭正月二之席はあと今日の夜席と明日一日だけですが、お時間ある方にはぜひお勧めいたします(混むと思うので、お時間は少し余裕を持って)。

以下、この日の演目。

-昼席
三笑亭夢七・・・・・穴子でからぬけ
林家扇兵衛・・・・・道具屋
三遊亭司・・・・・・雑俳
林家二楽・・・・・・紙切り(羽根つき、猫八ファミリー、弁天様)
三遊亭歌橘・・・・・子ほめ
三遊亭歌武蔵・・・・犬の目
三遊亭歌司・・・・・漫談(師匠圓歌の話)
ロケット団・・・・・漫才
春風亭勢朝・・・・・川柳ネタの漫談から池田屋
柳家花緑・・・・・・漫談(空港の搭乗ゲートで止められた話)
林家しん平・・・・・漫談(末廣亭売店、初詣の作法等)から狛犬、柏手
笑組・・・・・・・・南京玉すだれ
林家正蔵・・・・・・漫談(一門の正月の話、師匠三平の話)
柳亭市馬・・・・・・権助芝居
柳家小さん・・・・・親子酒
林家ペー・・・・・・ギター漫談
柳家小袁治・・・・・紀州
鈴々舎馬風・・・・・漫談
(仲入り)
三遊亭若圓歌・・・・暗記言い立て(歴代の巳年、ダービー勝ち馬、高校野球の優勝校、総理大臣など)
三遊亭圓丈・・・・・新・がまの油
桂文楽・・・・・・・六尺棒
川柳川柳・・・・・・ガーコン
三遊亭小円歌・・・・三味線漫談と踊り(今年ゃなんだか)
三遊亭圓歌・・・・・中沢家の人々

-夜席
柳家まめ緑・・・・・穴子でから抜け
鈴々舎馬るこ・・・・大安売り
松旭斉美智美登・・・奇術
柳家〆治・・・・・・看板のピン
柳家さん喬・・・・・替わり目
入船亭扇遊・・・・・たらちね
江戸家小猫猫八・・・動物物まね
柳家喬太郎・・・・・夜の慣用句
五街道雲助・・・・・堀之内
柳家権太楼・・・・・代書屋
昭和のいる・こいる・漫才
柳家小団治・・・・・都々逸
三遊亭金馬・・・・・紙入れ
(仲入り)
太神楽社中・・・・・獅子舞
初音家左橋・・・・・宮戸川(お花・半七なれそめ)
春風亭一朝・・・・・宗論
柳亭小燕枝・・・・・道灌
林家正楽・・・・・・紙切り(羽根つき、スカイツリー、勧進帳)
柳家小三治・・・・・蒟蒻問答
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸