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上野鈴本演芸場一月下席昼上野の西洋美術館でマックス・クリンガーの連作版画の展示があると知り、大学生の時分に講義で見せてもらって以来だなとすっ飛んでいったものの、月曜日で上野の美術館は全部休み(月曜休館なのをすっかり失念していた)。
動物園も休みで、さて夕方(品川で「映画 立川談志」を見る予定)までどう時間をつぶすかな、と考えたのはほんの一瞬、鈴本があるじゃないかと、さっさと上野の山を下りた。
という次第で、どちらかというと暇つぶしに覗いた寄席ではあったが、これが暇つぶしなんて言ったらバチが当たりそうな番組。一朝「壷算」(途中から聴いた)とホームランの漫才以外は、どちらかというとわーっとエネルギーが爆発するような高座はなく、じんわり、ゆるゆる、とろとろ、そよそよと耳を楽しませてくれるような塩梅。
そして、寄席の場合、こちらの好みもあるので大抵少なくとも2〜3組は退屈したり別のことを考えたり、ということがあるわけだが、この日はそんなこともなく、2時間半ほどずっと落語の世界に浸ることができた。西洋美術館が休みだったお陰で、望外の愉悦を味わえた(あまりに気持よくて、一之輔「めがね泥」でちょっとうとうとしてしまったが)。
和楽社中は和楽、小楽、和助の出演だったが、和助が鞠や剣を何度か落としたのが、ちょっと残念だったくらいか。あと小楽の、横並びで剣のやり取りをしたあとのいつもの「わあ」は、小花のときのほうが効果的だなと思う。
トリの扇遊「明烏」は、「明烏」がひさびさに聴けただけでも嬉しかったが、吉原に登楼ってからの若旦那、源兵衛、多助の演じ分けが、嫌味がないぎりぎりなくらいに鮮やかで、とても結構だった。自然に、あああの若旦那みたいな目に遭いたいものだな、という心持ちになる「明烏」だった。あと何故か、一晩明けてみたら、源兵衛と多助が勝手に甘納豆を食べる場面での「朝の甘みは乙なものだよ」という台詞が妙に印象に残っている。聴いてるときも、そうだよな、と深く頷いたのだが、そう導かれるなにかがあったのかもしれない。
馴染みのない方もおられるかもしれないので、野暮を承知で書いておくと、小ゑん「ぐつぐつ」は、屋台のおでん舟の中のおでんダネが会話するという噺で、おでんダネごとに売れる、売れないを愚痴ったりというもの。爆発には至らないくらいの笑いが次々に重なることで次第になんだかわからないけど可笑しくなってきて、話の合間に繰り返し入る「ぐつぐつ、ぐつぐつ」という擬音が余計に笑いを誘うという塩梅。とても楽しかった。
柳家小菊は季節柄か、火消しの女房の胸の内をうたった大津絵節の「冬の夜に」をじっくり聴かせてくれた。これも嬉しい。
あ、これは落語諸芸とは関係ないが、ホームランの漫才が通販番組をネタにしたもので(これも面白かったなあ)、冒頭「レッグマジック」という商品について「持ってる人」と客席に訊いたら、10人ほど手を上げたのに驚いた。昨日は5〜6割ほどの入りだったから、だいたい150人前後の内の10人というのは、かなりの割合ではなかろうか。通販番組の影響力を、変なところで感じた次第。
以下、この日の演目。
春風亭一朝・・・・・壷算
柳家喜多八・・・・・小言念仏
柳家小菊・・・・・・粋曲
入船亭扇辰・・・・・阿武松
(仲入り)
ホームラン・・・・・漫才
柳家小ゑん・・・・・ぐつぐつ
春風亭一之輔・・・・めがね泥
翁家和楽社中・・・・太神楽曲芸
入船亭扇遊・・・・・明烏
2013年01月21日
上野鈴本演芸場一月下席昼
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸