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浅草演芸ホール二月上席前半昼夜古今亭壽輔のトリ(昼)というのが私にとっては珍しく、見物に。
仲入り後に上がった桂文治が「今日は壽輔は『文七元結』」とバラしていたが、そのとおりに「文七元結」を30分ほど、発端から長兵衛が佐野槌を訪ね五十両を受け取りとぼとぼと吾妻橋まで戻るところまでは足早に、そこで長兵衛と文七とが出会ってからはみっちりと演っていた。
夫婦喧嘩中の達磨横町の長屋に近江屋卯兵衛が訪ねてきて話が進み五十両を返す受け取らないという場面で、屏風に隠れた女房のお兼が長兵衛の着物を引っ張るところは動きも大きく劇的かつ印象的だったが、全体的に泣かせなどの演出過多やいやな臭みがなく、聴いていてとてもよい心持ちの「文七元結」だった。
私の中では、この人は桂南なんなどと並んで「異相落語家」という印象が強いのだが、ちょっと印象を新たにした。もしいつもの蛍光イエローではなく(この日もそうだった)、粋な着物で演ったらどうだっただろうと、ちょっと妄想したりもした。
ちなみに壽輔のトリは上席前半のみで、この日が千秋楽だったが、ほかの四日は何やったのか、知りたいな。寄席か落語芸術協会に尋ねればよいか*。
*落語芸術協会に尋ねたところ、古今亭壽輔トリのネタは、
初日 竜宮
二日 老人天国
三日 竜宮
四日 地獄巡り 上中
五日 文七元結
との由。
もうひとりの“異相落語家”南なんは夜に出たが、その「探偵うどん」も、ごくごく個人的には大変珍しい噺で、これも見事だった。南なんは、ざっとネットで調べたところではこのネタをよくかけているようだが、他の古典を演っているときに比べてなにかぐっと来るものを感じた。
この日の昼夜を通して考えると、夜の仲入り前の、昇乃進「改名」(この題で合ってるかは未確認)→東京太・ゆめ子の漫才→南なん「探偵うどん」という流れが、この日一日のハイライトだったようにもに思う。
ほかに、昼夜合わせて「一人酒盛」「河豚鍋」「後生鰻」「豆屋」など、最近聴いてなかった古典が聴けたのが嬉しかった。ただし、眠さも手伝って、とりわけ遊之介「河豚鍋」などは噺のポイントをつかみ損ねてしまったりして、あとで考えると笑遊のやけっぱちのような寿司屋をネタにした漫談などのほうが印象に残ってしまった恨みはある。
江戸家まねき猫が、雌鳥の鳴き分け(というのか?)のつかみも見事で、秋の鹿とふだんの鹿を鳴き分けたり馬と鹿の鳴きまねを共演させたりなども面白く、今まで抱いていた印象より何割か感心の度合いが高まった。そういえば正月に観た猫八・小猫親子の共演は面白かったな、と思い出した。そのとき当代猫八への印象も新たにしたのだが、今年は江戸家に注目なのかな。まあちょっと注目しておこうと思う。
うめ吉は、「洗い髪の投島田を、根元からぷっつり切って、男のお膝に叩き付け、これでも浮気が止まないならば、芝居のお化けじゃないけれど〜」というちょっと凄艶な「字余り都々逸」(CD「玉手箱 寄席うた俗曲集」に収録)を生で聴いたのが初めてで嬉しい。あとはお馴染みの「芝で生まれて」「品川甚句」「しげく逢ふのは」。踊りは「木遣りくずし」、くるりと回る度に目に入る、帯のお太鼓のところに大きく咲いた梅の花が記憶に残る。
踊りといえば、神田紫が講釈のあとに踊ったかっぽれもよかったな。
えーあと、北見伸は長男の山上佳之介(てじにゃーなのかたっぽ)と共演でした。
客席は、昼が八割ほど、夜は四割ほどの入り。昼は高座中の出入りも激しく落ち着かない感じで、夜は夢太朗「禁酒番屋」のあとに出て行ってしまった客が多く、トリの「幸丸流常磐ハワイアンセンター物語」のときはちょっと寂しい印象だった。そのため出だしのところで一瞬「懐かしい流行歌ネタの漫談で終わってしまうのか?」とも思ったが、そんなことはもちろんなかった。
以下、この日の演目。
-昼席(途中から入場)
三遊亭遊馬・・・・・権助魚
国分健二・・・・・・漫談
神田紫・・・・・・・講談 宮本武蔵熱湯風呂
林家今丸・・・・・・紙切り
三遊亭圓遊・・・・・一人酒盛
三笑亭笑三・・・・・異母兄弟
三遊亭遊之介・・・・河豚鍋
コント青年団・・・・コント
春雨や雷蔵・・・・・金婚旅行
(仲入り)
古今亭今輔・・・・・日本史発掘
Wモアモア・・・・・漫才
桂文治・・・・・・・お血脈(マクラのみ)
橘ノ圓・・・・・・・漫談
鏡味健二郎・・・・・太神楽
古今亭壽輔・・・・・文七元結
-夜席
三遊亭明楽・・・・・子ほめ
桂夏丸・・・・・・・後生鰻
江戸家まねき猫・・・動物ものまね
瀧川鯉橋・・・・・・豆屋
春風亭昇乃進・・・・改名
東京太・ゆめ子・・・漫才
桂南なん・・・・・・探偵うどん
桂小文治・・・・・・粗忽の釘
檜山うめ吉・・・・・俗曲
昔昔亭桃太郎・・・・勘定板
(仲入り)
笑福亭和光・・・・・見世物小屋
三遊亭圓馬・・・・・ぜんざい公社
北見伸&山上佳之介・奇術
三遊亭笑遊・・・・・漫談
三笑亭夢太朗・・・・禁酒番屋
コントD51・・・・コント
桂幸丸・・・・・・・幸丸流常磐ハワイアンセンター物語
2013年02月05日
浅草演芸ホール二月上席前半昼夜
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸