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池袋演芸場二月下席徹夜明けに落語を聴きに行くもんじゃない、とはわかっているが、前から楽しみにしていた池袋下席は楽日まで行けず、特に急ぎの用でもなかった徹夜明けに、東銀座と上野で用事を済ませ、その間まあ結構な距離を歩いてから、池袋へ。
そういうときは、声や調子が心地よい噺家の芸にうとうとしがちなもので、まあそれも噺家には失礼ながら寄席ならではの楽しみではないかとも思うが、この日はとりわけ菊助『唖の釣り』、市馬『長屋の花見』で、ごく短い時間ではあるものの、大変気持ちよく舟を漕いでしまった。
『唖の釣り』は不忍池、『長屋の花見』は上野の山が舞台だし、ちょうど上野から鴬谷まで徘徊したあとだったので、昔のその辺りの風景を夢で見たりもした(ような気がした)。特に『長屋の花見』は、少し早めにうららかな春の陽気が感じられる塩梅で、噺と夢とが交差して、とても結構だった。
仲入り後の文菊『猿後家』は、反対にその調子のよさに目が覚めた。文菊〜正雀『花筏』という流れは、そういう意味ではとてもよかったな。
小円歌は、相撲甚句〜新内流し(かちかち山)〜名人出囃子〜さんさ時雨を弾き唱ったあとかっぽれを一舞い。まあいつも通りだけど、かっぽれはつい先日も観たばかりだが、小円歌の踊りはいつ観てもしびれる。ちなみにこの日は、志ん朝のお内儀さんにもらったという着物で、何という柄かは知らないが、白地に黒で粗い網目模様を染め上げたという感じ。渋い多色使いの帯との取り合わせが実に素敵だった。
さて、お目当てのひとりトリの菊志んは、マクラで芝浜のあらすじをだーっと語ったのだが、それが実に鮮やかで見事。『宿屋の富』本編も、とてもいい調子で気持よく聴いたが、まああくまでも自分の好みや体調による感想ではあるけれど、すこうしだけ熱演過ぎて、主人公から徐々に滲み出て来る“これからどうしたもんかなあ”というような味わいが薄味かなとは思った(いやでも、春に向かう陽気の中だったからかな、ともあとでちょっと思ったが)。
でも、うまいなあと思う箇所も多かったし、その熱演振りの持ち味が聴いてる自分にはまったときの面白さや、あるいは逆に歳を重ねたあとに醸し出される味わいなどの想像(妄想)も楽しんだ。多少余裕のない中だったが、聴きに来てよかったと思う。
えー、あとは、前座と二つ目と女流が続いたことから、女流の噺家というものについてつらつらと考えたり(あらかた忘れてしまったが)、圓十郎から勢朝を置いて笑組が出てきて、そのときちょうどうとうとしてたので“え? 圓十郎が背広に着替えて出てきた? 同一人物だったか?”と慌てたところなどが、この日の自分にとってはポイントだった(そしてその後、正雀が『花筏』をかけたのが可笑しい)。笑組の芥川龍之介『杜子春』をモチーフにしたネタは面白かったな。
あ、圓十郎『ナースコール』は、三遊亭白鳥が演るときと同じような印象だったが、これは噛んだり一瞬忘れたように見えるところが多かった。もう少し練られたらまた聴きたい。
勢朝も、いつも通り爆笑の連続ではあったが、途中でふと調子が澱み、客席に変な間が空いてしまうところがあったかな。何度かあれっと思ったのを記憶している。
そういえば、池袋演芸場が禁酒になったのを、この日初めて知った。酔客がなにかトラブルを起こしてそれ以来、という話だった。もう2008年頃からなのかな? 呑める場所だとばかり思ってたので、場内の張り紙が目に入ってなかったようだ。間抜けだ。
以下、この日の演目。
林家なな子・・・・・転失気
古今亭ちよりん・・・やかん
橘家圓十郎・・・・・ナースコール
春風亭勢朝・・・・・袈裟御前
笑組・・・・・・・・漫才
古今亭菊助・・・・・唖の釣り
柳亭市馬・・・・・・長屋の花見
(仲入り)
古今亭文菊・・・・・猿後家
林家正雀・・・・・・花筏
三遊亭小円歌・・・・三味線漫談
古今亭菊志ん・・・・宿屋の富
2013年02月28日
池袋演芸場二月下席昼
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