2013年04月08日

新宿末廣亭四月上席

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新宿末廣亭四月上席昼の前座から夜のトリまでみっちりと。

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まず昼。二階は開かなかったが、一階は桟敷までほぼ満員。

金原亭馬治と蜃気楼龍玉は、聴くの初めてだったかな。二つ目の馬治は、最初のうちちょっと退屈したが、聴いているうちに微妙なボケ味というかフラというか、そんなようなものを感じて、好ましく思った。また聴きたい。龍玉は顔(顔付と表情の両方)がとにかく好みで、旦那とざるやのやり取りの間がとても気持ちよかった。

順番が前後したが、ホームランの漫才ではあしたひろしをネタに採り上げて、モノマネをしたりしながら笑いを取りつつ、またいつか高座に上がるのをお待ちしたい、ということを言う。実際のご容態は存じないが、事情通なことを言うよりも、ずっと期待するというところに愛があるとは思う。それは芸人諸師匠方も客席側も、ほとんどが同じ思いを持っているものと思う。

三遊亭白鳥『牛丼晴れ舞台』は、以前聴いたのと比べたら、寄席向けにコンパクトにまとめたのかな?という印象。面白かったが、最初のうちは客席が笑いどころが掴めない様子で、最後までどかんと受ける感じはなかったか。

金原亭馬生『真田小僧』は、実にゆったりした『真田小僧』だったが、そんなゆったり演らなくても…… という気はした。好みの問題。

林家種平『忘れ物承り所』は、「この傘はなくしてもなくしても出て来る。まるでつきまとわれているようだ。この傘を、月亭可朝と呼んでいる」というくだりが好きだなあ。そこで下げる場合もあるようだが(未聴)、この日は弁当まで。

古今亭志ん輔『七段目』は、歌舞伎座新装という時節柄かかると嬉しい噺。この日は全体に渋い高座の多い印象だったが、その中で種平や夜の林家しん平と並んで賑やかな印象が残った。

林家ぺーは、この日はギターを持たず、王子様のような、袖が大きく膨らんだ、上下ピンクの光沢のある衣装で登場。喋る内容はいつも通りだが、『ペーパー夫婦節』を歌った流れから何故か「高嶋政伸、器量の悪いモデルと離婚成立、おめでとうございます」と下げたのが可笑しかった。

川柳は、ちょっと元気がない感じだったかな。ほんとに少うしだけ、という感じだけども。

林家きく麿『珍宝軒』は、『金明竹』の博多弁?版のような噺だが、最初なにを言っているかわからない訛りが三回繰り返すうちに聴き取れて来るのが可笑しい。恐らく、そうなるように調整しているのかなとも思う。その辺のコントロールが意図した通りに行っているなら、大したものだ。

鏡味仙三郎社中は、仙三郎と仙志郎のふたり。仙志郎の傘の曲芸が、ちょっと危なっかしかったかな。

トリの五街道雲助『禁酒番屋』は、いい調子で客席もたいそう湧いていた(この高座と夜のトリの柳亭市馬『厩火事』のお陰で、帰りに一杯やる次第となった)。

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夜は、三割か四割という入り。

前座と二つ目がどちらも噛み過ぎ。どうなることやらと思ったが、出順が変わって三人目に柳家権太楼が出て救われる。『町内の若い衆』の熊公のおかみさんが、いつも通り、憎たらしくもなんだか可愛らしくて、好ましい。

続く柳家小菊の俗曲も、まあいつも通りだが、最後の『相撲甚句』の前に唱った『どんどん節』が、越路吹雪の洋風『どんどん節』(『コーちゃんのお座敷うた』所収)のにおいも感じさせるような感じでよかったなあ。

初音家左橋『宮戸川』は、お花半七なれそめまで。すーっと気持ちのよいいい塩梅の『宮戸川』だった。

林家正楽の紙切りは、「相合い傘」に続き注文で「入学式」「春の宵」そして桜の季節だからか?「サグラダファミリア」というのに笑った(見事に切っていた)。あと「天使」という注文もあったな。

柳家花緑『気の長短』、上手いし面白いのだけど、あと少し何かが欲しいと思った。それが何かは、よくわからない。

竜邸小燕枝『小言幸兵衛』は、幸兵衛の、小言を楽しむという確信犯的な側面を描いた印象だった(小言を言わずにいられない、というのではなく)。その辺、今まで私の聴き方が甘かったのかな? お馴染みの噺だからといって馴染んだ通りに聴くだけでなく、その辺の味わいも意識しつつ聴いてみたいと思った。

林家しん平『焼肉天使』は破壊的に可笑しい。この日は「金属アレルギー」とかで無精髭を生やしたまま、そかも羽織の袖に手を通さずに登場とやさぐれた感じだけに、余計やけっぱちな味わいが面白かった。思わず長春館に行きたくなった(行かなかったが)。

柳家小さん『替わり目』、夫婦が落語の登場人物として(多少でも)戯画化されたものではなく、ごくごく普通にその辺にいる酔っ払いの夫とそれをあしらう妻のように描かれているような塩梅で、もしかしたらそういうところが値打ちなのかな、とも考えた。私は当代小さんのよさがよくわからなかったので、そういう意味では私にとっては発見だったかもしれない。次はその辺の味わいを意識して聴いてみたいと思った。

翁家和楽社中は、和楽、小楽、和助の三人。間に和助を挟んだ大ナイフの取り分けが緊張感に溢れていて面白かった(客席の若い人たちも湧いていた)。

トリの柳亭市馬『厩火事』も、滑稽と人情の触れ幅を抑えた、いい塩梅の『厩火事』だったなあ。その塩梅のお陰で、サゲがとても心地よく効いたような気がする。

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という感じだったが、この日は何故か、前期高齢者くらいのご夫婦で旦那のほうが落語演芸好きなのか高座中に奥さんに向かっていろいろ解説する人が多かった(うるさいよ)。

あと夜には、下手桟敷に携帯電話が鳴ったら出て会話を始めた女の人もいたな(高座中)。すぐに係員に注意されていたけど、いくらでも席が空いているのに桟敷の一番後ろ辺りにいたから、電話かかってくる用事があるのをあらかじめわかってたのかもしれない。

それは特異な例としても、相変わらず電話鳴らす人は多いな。なんとかならんかな。

以下、この日の演目。

-昼
古今亭きょう介・・・手紙無筆
金原亭馬治・・・・・子ほめ
ホームラン・・・・・漫才
蜃気楼龍玉・・・・・ざるや
三遊亭白鳥・・・・・牛丼晴れ舞台
アサダ二世・・・・・奇術
金原亭馬生・・・・・真田小僧
林家種平・・・・・・忘れ物承り所
柳家紫文・・・・・・三味線漫談
古今亭志ん輔・・・・七段目
鈴々舎馬桜・・・・・粗忽長屋
林家ペー・・・・・・漫談
川柳川柳・・・・・・ガーコン
(仲入り)
林家きく麿・・・・・珍宝軒
大空遊平・かほり・・漫才
林家正雀・・・・・・開帳の雪隠
柳家小満ん・・・・・出来心
鏡味仙三郎社中・・・太神楽
五街道雲助・・・・・禁酒番屋

-夜
柳家緑太・・・・・・桃太郎
柳亭市江・・・・・・権助魚
柳家権太楼・・・・・町内の若い衆
柳家小菊・・・・・・俗曲
初音家左橋・・・・・宮戸川
林家正楽・・・・・・紙切り
春風亭勢朝・・・・・漫談
柳家花緑・・・・・・気の長短
松旭斉美智・美登・・奇術
蝶花楼馬楽・・・・・ケチ総まくり、踊り(深川)
柳亭小燕枝・・・・・小言幸兵衛
(仲入り)
林家しん平・・・・・焼肉天使
笑組・・・・・・・・漫才
柳家小袁治・・・・・唖の釣り
柳家小さん・・・・・替わり目
翁家和楽社中・・・・太神楽
柳亭市馬・・・・・・厩火事
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