2013年05月25日

快楽亭ブラック誕生日前夜祭

浅草木馬亭にて。「快楽亭ブラック誕生日前夜祭」ということで、誕生日やお祝いにちなんだネタをかけるという趣向が多かった。

たとえば、林家しん平は童貞をこじらせた36歳独身男のところにいきなり身に覚えのない誕生日プレゼントが届くという、この日のために作った新作。なんだろうと開封してみると、スイッチを入れると女性の立体ホログラムが出現する謎の小箱。小箱はシリコン製で細い切れ込みがあって、男は思わず、切れ込み部分にローションの代わりにマヨネーズを塗り付けて、自慰行為に走る。箱にスイッチがあるのに気付き、押してみるとダイソンの掃除機並の吸引力が発揮され…… マクラから全編バレ噺で、結局お祝いなのかなんだかよくわからなかったが、可笑しかった。

あるいは坂本頼光は、やはりこの日のために作ったという、小津安二郎『秋日和』を元ネタにした快楽亭ブラックの伝記(?)(題名は『きじるし』。付けも付けたり)。ブラックの二ツ目時代の名前である“快楽亭セックス”をネタに、佐分利信、中村伸郎、笠智衆、原節子、司葉子らのモノマネ(これがまた達者)の当て振りで“セックス”と言いまくる…… 料亭若松の女将(高橋とよ)に、あらあたしも落語好きなんですよ、立川流の、あの名前がカタカナの…… と言わせつつ実は、というくだりが最高。

ちなみに坂本頼光では、「サザザさん」の新作(第7話)も観ることができた。こちらも狂ってて最高。

立川左談次は、『まんじゅうこわい』の饅頭を“落語家”に変えて、歴代の名人をこき下ろしたり可笑しな逸話を披露したり。ここでも“立川流の名前がカタカナの落語家”が、終盤に向けて重要な役割で登場。これまたお祝いなのかなんだかよくわらかないが、立川談志晩年の『芝浜』への寸評など、やはりブラックの会ならではのネタである。左談次は、終始メモ(立川流一門会のチラシの裏を使用というのが可笑しい)を見ながらの高座だったが、三遊亭圓生襲名問題などもネタにしていて、落語好きにはたまらないネタをぽんぽんと入れていきながら、知らなくても笑わせられる間のよさが見事だった。

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順序が前後するが、開口一番の快楽亭ブラ坊『他行』は、与太郎が父親の居留守中に来たお客に「おとっつぁんは出張」と断り続ける顛末だが、結構珍しい噺ではないかな? 最後にいつ聴いたが、思い出せない。

大本営八俵は、恥ずかしながら初めて観たが、狂気の針がいきなり振り切れるようなところの速度と触れ幅がもの凄く、あっという間にその笑いの渦に巻き込まれた。すごいなーこの人。ネタは軍国ネタ、右翼ネタから様々な方向に発展していくが、中でも猪木落語(猪木芝浜)と合コンシェルジュという人(実在する)の話が可笑しかったな。あと出囃子がトルコの軍楽というのもよい。

寒空はだかは、憂歌団のモノマネで『嫌んなった』を唄ってるといつの間にか牧伸二の『やんなっちゃった節』に変わるエア弾き語り(このネタの許しを牧伸二に得ようと思っていたが果たせなかった、と言っていた)、『笑点』のテーマソングに乗せて『君が代』を唄って始まる『皇族演芸会』(いとし・こいし風漫才で)、勝手に作った養老孟司『バカの壁』の主題歌、などなど。笑いの量を言えば、この人と坂本頼光が群を抜いていたように思う。

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さてお目当て快楽亭ブラックは、『火焔太鼓』が元ネタの、漬け物屋が“紫式部が『源氏物語』執筆時に、濡れ場を書くための自慰行為に使ったとされる、大根の古漬け”をお殿様に売りにいくという『買えん大根』。ブラックがあの口調で“オナニー”というのが、なんとも可笑しくて、噺も全体に力が抜けるほどバカバカしくてよい。

あとマクラで、文化庁芸術祭参加作品の予告編、として『文七ぶっとい』のさわりを演ったのだが、長兵衛が佐野槌の女将に“650万円”を用立ててもらい、帰途多摩川を渡ろうとすると橋の上に…… と展開して場内大爆笑。すごい期待が募るが、ほんとにやるのか?

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ということで、久々に、テレビでも寄席でもできないであろう芸満載の、快楽亭の会を堪能。楽しかった。

以下、この日の演目。

快楽亭ブラ坊・・・・他行
大本営八俵・・・・・軍国漫談
林家しん平・・・・・新作落語
寒空はだか・・・・・漫談
(仲入り)
坂本頼光・・・・・・活弁アニメ
立川左談次・・・・・古典(饅頭怖い)改作
快楽亭ブラック・・・買えん大根
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸