2013年06月30日

浅草東洋館スペシャル寄席 2013 VOL.18

浅草東洋館タブレット純(田渕純)があした順子と共演する、と目にしたので、どんな風に絡むのかを見に行った。

予想もつかないなと思って割と期待していたのだが、要は、あした順子は普段落語定席に上がるとき、休演しているあしたひろしの代わりに前座を上げて、いじり倒しながらその実お客に紹介(前座の顔と名前を覚えてもらう)したのち、あした順子・ひろしの定番ネタである「男はあなたひろし、女は君さ順子」を演らせるのだが、その前座の役にここではタブレット純が指名された、というだけであった。

だけではあったが、「女は君さ〜」の部分はさすがムード歌謡の甘い声で、しかもバラード調に切々と歌ってみたり、順子にいきなり抱きつく暴走があったり(おどおどしながら突然押しが強くなる、というのはタブレット純の持ち味のひとつだ)、順子にいじられている最中に「女も男もどっちも好きなんです」と順子が返答に困る回答をしてみたりと、タブレット純ならではの掛け合いになっていて、大変面白かった。恐らくそう見られる組み合わせではないだろうから(またあるかもわからない)、見物しといてよかった。

ちなみに順子は、衣装としてプリーツプリーズのカラフルな跳び箱柄ワンピース(参考。写真の右側)を見事に着こなしていて、「あたしの下半身を見てるの? 5番の辺り? それとも6番?」とネタにも使っていた。漫談の内容はほぼいつも通りで、終わりに、ずっと高座を休んでいるあしたひろしの声の録音でひとネタ演ったのち「再び一緒に舞台に立てる日を楽しみにしています」と挨拶して終わるのだが、今日はそのとき、目に光るものを見たような気がする。見ているこちらも泣きそうになった。

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そのほか印象に残ったのは、まず、仲入り前、太平洋の曲芸〜荒木巴のマジックと大きく盛り上がったあとに、その余韻の仲、松鶴家千とせの、ネタが次々と空中に霧散して行くかのような漫談が続くという流れ。最高潮の笑いと興奮を頭の中やら胸の中やらに感じ続けたまま、失われたオチを手探りで探らされるような松鶴家千とせの話芸に身を委ねるというのは、実に面白い体験であった。意図して組んだ構成だったらすごいなと思ったが、ギター漫談がふたり続いたり、くれないぐみと太平洋が同じ傘の曲芸をしたりということを考えると、そこまで緻密に組んだものではなく、恐らく偶然そうなったのであろうと思う。

そう考えると、これまた、ひとつの奇跡的な瞬間に立ち会えたのかもしれない。

あと、客席の感じが、最近の落語定席よりもよっぽど寄席っぽいという印象も残っている。マナーに関しては、お喋りをする客や携帯電話を鳴らす客はいるものの、贔屓の芸人に注ぐ眼差しとか、高座に注目する姿勢とか、くつろいだ雰囲気とか、当意即妙な掛け声とか、客席から発せられるいろいろな要素がその場の空気に相応しく、その場にいてとても気持ちがよかったのだ。

まあ、寄席っぽい、というのもあまりに主観的であまり意味のある論評ではないかもしれないが、生の芸能に触れる場として、普段通っている落語定席と比べて大変居心地がよかった次第。記憶する限りでは、東洋館では大抵そうだったような気がするが、そう意識したのは今日が初めてだし、招待客がいるときなどは、また様子が異なるかもしれない。またちょくちょく観察してみたいと思う。

あとは、各演目ごとに−

習志野ごんべえ・・・漫談

「ロシア製の(韓国製の、千葉県で、静岡県で)パソコンを買ったら、漢字変換が……」などの考え落ちや、駄洒落の小咄中心。最後に『春夏秋冬』『明日があるさ』などの替え歌。脱力系?



チックタックブーン
 ・・・・・・・・・漫才

ほんとうのでくの坊にしか見えない(ところがすごい)快信孝を、羽原なおみがひとりでネタを言いながらどつきまくる。ふたりの激しい落差から来る独特の間と、どつきの回数の多さとその間が、すごく可笑しかった。ネタは「世界遺産」「中国野菜」「3Dプリンター」など。



2世代ターボ・・・・漫才

世代差漫才。「クルマの中のBGM」「ディズニーランドのキャラクター」など。



ポンちゃん人形・・・腹話術

いつものお土産のポッキーで、千円の祝儀を(力尽くで?)もらっていた。



ペペ桜井・・・・・・ギター漫談

内容は先日の鈴本とほぼ同じで、刑務所慰問ネタが追加。



タブレット純・・・・ムード歌謡漫談

フランク永井『おまえに』をカラオケで歌ったのち、自己紹介〜

・マヒナスターズの専属歌手(コーラス)としてデビューし、和田弘の死後(マヒナ解散後)はムード歌謡歌手として活動していたが、見た目と芸のギャップが面白いので東洋館にスカウトされた。

・歌の事務所に、お笑いのときは芸名を変えて欲しいと言われ、タブレット純を名乗るようになった。

・そして最近、歌手のときもお笑いのときも芸風が同じなので、名前をタブレット純に統一することにした。なので今日は、“田渕純”の追悼記念ライブ。(後半、どこまでほんとか知りませんが−)

で、今度フジテレビのモノマネ番組に出ることになり(8月)、モノマネも練習していると言って、大沢悠里の真似の司会から中条きよし『うそ』を歌う。

それから、みかんを描いたイラストを見せながら、みかんは大好きだが、この白い筋みたいなものがきらいで、いつも完全に取っていた。しかしこの部分に栄養があると教わり、調べてみたら「アルベド(Albedo)」という名前もあった。そこで歌を作ったと、『麗しのアルベド』を歌う(歌の主旨は『愛しのメルルーサ』とほぼ同じ)。

最後にまたモノマネで、美輪明宏『黒蜥蜴』〜藤田まこと『てなもんや三度笠』〜渥美清『男はつらいよ』をメドレーで歌って〆。

モノマネは、大沢悠里と美輪明宏以外、あまり似てなかったかな??



くれないぐみ・・・・コント

古典芸能の大御所を呼んである、という設定でのコント。紅ちかこのほうが途中で着替え、大御所役で傘の曲芸を演じる(次も曲芸の太平洋なのだが……)。



太平洋・・・・・・・曲芸

剣玉(糸あり、糸なし、糸なし2玉、長糸)、皿回し(客参加)、寝かした円筒の上に乗せた板に乗り、傘の曲芸(鞠の回し分け)とジャグリング。かなり見事で大いに湧く。



荒木巴・・・・・・・マジック

お姫様?キャラクターによるマジック。ネタはよく見るものだが、喋りが達者でバカな世界に忽ち引き込まれ、かなり楽しい。客いじりもうまい。最後はニワトリ女。



松鶴家千とせ・・・・漫談

太平洋と荒木巴の余韻で大いに湧いている中、客を置き去りにするような、ネタが途中で空中霧散するような話芸。かなりしびれる。「シュビドゥビ」と「イエーイ」も盤石。



(仲入り)

パーラー吉松・・・・形態模写

子供の客に手品で出したお菓子をあげたのち、いきなり服を脱ぎ始め、アブドラ・ザ・ブッチャー、高見盛、若乃花、朝青龍、北の湖などの、よく特徴を捉えた形態模写。そしていきなり、ものすごく杜撰な浅田麻央に笑う。あと客を巻き込んでの、民族舞踊『男の人生』。なんだかよくわからないが笑う。



サムライ日本・・・・チャンバラコント

『黒田節』を舞いながらのチャンバラをドタバタで。「村田英雄がお盆に三社様に来てそのまま今も楽屋にいる」というのが可笑しかった。



三遊亭好太郎・・・・落語

フランス語に堪能な人に「灰皿をフランス語でなんというか」と尋ねたら「タバコボーン」、といった小咄のあと、『豆味噌』。この日の流れの中で聴くと、休憩時間のような感じ。



すず風にゃん子・金魚
 ・・・・・・・・・漫才

金魚の頭は富士山(世界遺産登録記念)、この日の流れの中で見ると、衣装がちょっと地味だったが、見た目の印象の強い出演者が多いので、逆を行ったのか? ネタはバスツアー〜動物エクササイズ。



立川談幸・・・・・・落語

小咄中心の漫談。これまた休憩時間のような感じ。



岡本圭司(バラクーダリーダー)
 ・・・・・・・・・漫談

カラオケで『日本全国酒飲み音頭』『さよならのサンバ』『タンゴ・アメリカーナ』『チャチャチャ大好きよ』『演歌・血液ガッタガタ』を歌った。



あした順子×タブレット純
 ・・・・・・・・・漫談

本文参照



昭和のいる・こいる
 ・・・・・・・・・漫才

歌謡曲ネタ。インチキな『啼くな小鳩よ』など、何度も聴いているのに、今日も爆笑。あと『あざみの歌』(山には山の愁いあり〜)を歌う場面では、客席に薄く合唱も起きていたのが可笑しかった。

posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸