2013年07月02日

あまちゃんサウンドトラック レコ発LIVE

於パルコ劇場

大友良英&「あまちゃん」スペシャル・ビッグバンド:
齋藤寛(fl, picc, rec)、井上梨江(cl, bcl)、江川良子(sax各種)、東涼太(sax各種)、鈴木宏志(sax各種、rec)、佐藤秀徳(tp)、今込治(tb)、近藤達郎(kb、hca)(以上、前列下手から)
江藤直子(p)、大口俊輔(acc)、かわいしのぶ(b)、小林武文(ds)、相川瞳(per/conga、darbukka、小物、mar)、上原なな江(per/首掛けバスタム、小物、mar)(以上、後列下手から)
大友良英(gt、指揮)(前列最上手)ライブはまず、サウンドトラックよりも少しアップテンポで前ノリの「オープニングテーマ」で開始(チャンチキは近藤達郎が担当、テンポが速過ぎるのか、大変そうに思えた。印象的な猫の鳴き声のようなソプラノサックスは、サウンドトラックでこの音を出していた江川良子が吹いた)。

その後はサントラCD付属の大友良英による解説に書かれている各曲が作られた背景を、少しの追加エピソードと笑いをまぶして大友が話しつつ、演奏を続けて行くという進行。純然たる音楽の演奏会、というよりは大学の講堂などでゲスト講師を呼んで行われる課外講義、のような感じもあった。

ドラマを見ている最中は主に話の進行や役者の芝居に注意を向けていて、サウンドトラックは物語や演技を後押ししたり強調する味付けとして自然と耳にしている感じだし、サントラCDはまだ聴いていなかったので(これ書きながら聴いた)、なんとなく耳に残っている楽曲を生演奏なりの迫力でもってきちんと集中して聴く、という体験は、なかなか面白かった。とりわけ『じぇじぇじぇ』『アイドル狂想曲』『地味で変で微妙』辺りの生演奏は、2008年のバート・バカラック来日時の、バカラック初期の映画音楽の生演奏(『Magic Moments』や『The Blob』など)を聴いたときの感興を思い出した。

なお『じぇじぇじぇ』では井上梨江がバスクラリネットを演奏。『アイドル狂想曲』ではソロ回しがあったが、その中でかわいしのぶがファズ・ベースのソロを披露。

このライブ用に編曲を変えたり、といった部分も少なくないとは思うが、『テーマ変奏曲』でのホーンのソロ回しや、『あまちゃんクレッツマー』で鈴木宏志のテナーサックスと今込治のトロンボーンのバトルなどもあったものの(このとき今込がとつぜん立って演奏しようとしてマイクの高さ調整を試みたがなかなかうまくいかず、1コーラス分くらいソロを飛ばしてしまってハラハラさせられたのは、ライブっぽかったが)、ライブだからといって演奏者各々を前面に押し出し、その腕前や技を強く感じさせられるような場面は、多くはなかったと思う。そもそも、私自身も「サウンドトラックの生演奏ってどんな感じに響いてくるのかな」という興味で聴きに行ったので、興味の対象はアンサンブルにあり、個々人の演奏に特に注目して聴いてはいなかった。

そんな中でも印象的だったのは、まずは『海』と『希求』での近藤達郎のハーモニカ。『海』については特に近藤に注目して聴いてはいなかったのだが、なんだか自然と感動を覚えてその要因を探したら、近藤のハーモニカだったという次第(ちなみに『海』という曲は、デモを宅録ではなく、ほぼこの日の演奏メンバーでNHKのスタジオに入り、簡単な譜面から即興的に演奏して制作したとの由)。

あと、『銀幕のスター』での江藤直子のさりげないピアノソロも、何とも言えない間が感じられてよかった(全体に若い演奏者が多いからか、近藤のハーモニカといいこういうところに年季の差が出るのかな、とも思った)。小林武文のドラムは、アンサンブル内のドラムに徹している感じで、(『朝のテーマ』で一度スティックを落としたものの)終始的確で味わい深い演奏だったと思う。

といいつつ、『テーマ変奏曲』での大口俊輔のアコーディオンソロと齋藤寛のピッコロソロや、『芸能界』での相川瞳のパーカッション(できればU-Zaanを呼んでもらいたかったが、相川瞳もコンガとダルブッカで、この曲のタブラの演奏の雰囲気をそれなりに醸し出していた)などにはハッとさせられた。相川瞳と上原なな江は、『日常』でのマリンバ連弾や、『地味で変で微妙』での笑いを湛えたような演奏も面白かった。

大口俊輔のアコーディオンは『銀幕のスター』でのソロや、『あまちゃんのワルツ』でのリコーダーの伴奏もよかったな。

『あまちゃんのワルツ』といえば、この曲では鈴木宏志がリコーダーを演奏。元々、この曲の録音時に、鈴木宏志がスタジオにリコーダーを初めて購入して持ち込み、その結果リコーダーを使った曲になったとの由。この日も、その責をよく果たしていたと思う。

一方、『銀幕のスター』は佐藤秀徳のトランペットがリードする形で演奏されるが、このトランペットがやや線が細く、音が不安げに揺れていたのが、『Stardust』などを彷彿とさせる、「わたしが子供だった頃に光り輝いて見えたアメリカのテレビや映画の世界のイメージ」(サントラCDの解説より)曲調にそぐわなかったのが残念だった。『星めぐりのうた』のトランペットは、よかったんだけど。なお大友良英の言いによると、佐藤秀徳がこの曲を演奏するのは今日が初めてとのこと。

あと、これはわざわざ言うのも野暮だが、『琥珀色のブルース』(東涼太と鈴木宏志のダブル・バリトンサックスがなかなかの迫力だった)はやはりマダムギターのギターで聴きたかった。この日は大友良英が弾いたが、サントラでのマダムの枯れた音色と異なり、大友は歪ませた太い脂っぽいギターで、70年代の白人ブルースロックのような演奏。それはそれでカッコよかったが、別の曲のように感じるくらい、サウンドトラックとは印象が違った。まあ、私が「サウンドトラックと同じ印象で生演奏を聴きたかった」というだけの話ではある。

ちなみに大友良英は、『友情』でのみフィードバック奏法。また『TIME』ではE-BOWを使用していた。

さて、「忠兵衛のに向けて書いた曲でしたが、出来上がってみると、むしろ小泉今日子さんにぴったり」(サントラCDの解説より)という『灯台』で、一旦ライブは幕。アンコールがあるだろうことはまあ想定内だが、『潮騒のメモリー』は期待していなかったので嬉しかった。これはインストで、トランペット、アコーディオン、フルート、トロンボーンが主旋律を担当。歌がない分、曲自体のよさがとても伝わってきたと思う(作曲者のSachiko Mが客席にいたそうだが、この日はさすがに歌いに出ては来なかった)。

で、最後にもう一度『あまちゃんオープニングテーマ』でほんとうに幕、と思いきや、二度目のアンコールにも応えてくれて、即興的な味付けで『地味で変で微妙』をもう一度。「しょぼくやろう」という大友の提案で、グダグダな感じで始まり、ドロドロと溶けていきつつ、最後はがーっとかき回して終わり。最初のうち、各々が何処に着地するのかが見えない、面白い演奏だった。

終わってみると、ほのぼのと楽しい、いい演奏会であった。そういう手触りの演奏会に滅多に行かないこともあり、とても楽しい時間を過ごせた。

以下、この日のセットリスト。6月18日のアサヒビールロビーコンサートの時と比べると、『日常』『朝のテーマ』『芸能界』『銀幕のスター』『潮騒のメモリー』が追加されているが、全体の構成はだいたい同じ感じかな。(6月18日のセットリストは、こちら参照)。

01 あまちゃんオープニングテーマ / ロングバージョン
02 行動のマーチ
03 日常
04 朝のテーマ
05 琥珀色のブルース
06 じぇじぇじぇ
07 アイドル狂想曲
08 芸能界
09 海
10 テーマ変奏曲

(休憩)
11 あまちゃんスイング
12 銀幕のスター
13 アキのテーマ
14 友情(ロングバージョン)
15 あまちゃんクレッツマー
16 地味で変で微妙
17 あまちゃんワルツ
18 星めぐりの歌
19 TIME
20 希求
21 灯台
(アンコール1)
22 潮騒のメモリー(インスト)
23 あまちゃんオープニングテーマ / ロングバージョン
(アンコール2)
24 地味で変で微妙(しょぼいバージョン)
posted by aokiosamublog at 23:00| 音楽(ライブ)