2013年07月09日

浅草演芸ホール七月上席

浅草演芸ホール七月上席昼夜ほおづき市を覗き、昼を摂ってから、12時ちょっと過ぎに入場。古今亭駒次と古今亭菊太楼は聴き逃した。

この日は団体客もなく、時折2〜3人とか5〜6人のお年寄りの集団が入ってきて席を見つけるまでの間にやや場の空気をかき乱すことはあったが、場内は比較的落ち着いた雰囲気。落ち着き過ぎていて、少し寂しい感じもした。

実際、昼も夜も、誰がお目当てなのかよくわからない感じの客も入っていたようで、トリの前(昼なら古今亭菊春か金原亭世之介の辺り、夜なら入船亭扇遊か桂文楽の辺り)で帰ってしまう客もいて、昼はトリの金原亭馬生のあとに大喜利の茶番があったりしてまあまあ賑やかだったが、夜のトリの三遊亭白鳥のときは櫛の歯が抜けたあとのような、寂しさが漂う客席ではあった。

そんな中で、『白鳥版火焔太鼓』で爆笑を取っていた白鳥はさすがではあった。さすがではあったが、古今亭志ん生志ん朝親子が作り上げた『火焔太鼓』から肝になる演出をすべて抜き取って、噺を素の状態にしてから自作のくすぐりで組み立て直したという自己流古典の一席でのトリは、扇遊『ちりとてちん』、文楽『看板のピン』と来ての(間に三遊亭歌之介『爆笑龍馬伝』が入るが)トリだからか、不思議な風情もあった。うまく言葉にできないが、白鳥の寄席での異質さがより一層際立つという感じだろうか。芸の感じとしては、番組の途中で出てきて場を暖めるような役割が相応しい気もするが、トリで出てくれば出てきたで、充分に笑い満足するという、妙な味わいを味わわさせられる。その妙な感じを、扇遊や文楽など“昔ながらの噺家”の存在が、より一層際立たせていたように思う。

ま、面白いことは面白いし、その辺の出順の塩梅の妙も、寄席ならではだとは思う。

順序が逆になるが、昼のトリの馬生は『安兵衛狐』。のんびりと気持ちのよい高座だったが、流行りの「今でしょ」を得意気に披露していたのは興醒め。時事ネタや流行言葉は、すっと聞き流すかどうかくらいの感じで投げられたものでつい笑ってしまう、くらいがよい。ほら流行りのネタだ、そら笑え、というのは、野暮というものではないかな、とちょっと思った。

茶番は馬生(塩原太助)、古今亭菊春(円次郎)、翁家和助(青)、金原亭馬吉と名前失念したが前座(悪党)、金原亭馬治(義太夫)による『塩原太助』。和助による青(馬)のゆるい下ネタ(馬生扮する太助を止める場面で抱きついて股間をこすりつけたり、前足を陽根に見立てたり)が可笑しい、呑気な芝居だった(ちょと呑気過ぎる演し物かな、とも思った)。最後に茶番出演全員で『かっぽれ』を踊って幕。

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この日はあまり細かいことは考えずに聴いていたが(一部寝てしまったりもした)、落語では春風亭一之輔『道灌』、春風亭一朝『祇園祭』(先日TBS落語研究会のTV番組でも観た。この日は、同行の他のふたりがなかなかやってこない江戸っ子が、京都の土地の人と茶屋で偶然隣り合わせる、という設定だったと思う)、三遊亭天どん『名探偵の不幸』、隅田川馬石『あわびのし』、古今亭菊之丞『棒鱈』、三遊亭歌之介『爆笑龍馬伝』、白鳥『白鳥版火焔太鼓』が、自分にとってはとりわけよかった。

川柳川柳『ガーコン』は、寸分違わぬいつも通り。林家種平『お忘れ物承り所』や春風亭百栄の漫談も大いに笑ったが、ふたりとも代演ということで、さらっとしており、やや喰い足りない感はあり。またいずれ、もう少し突っ込んだ高座にもお目にかかりたい。

色物では、特にこれ、というのはなかったかな。漫才勢、奇術、曲芸、音曲などなど、いつも通りのネタで、いつも通りの楽しさであった。

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あとは印象に残った場面を、備忘録的に。

・近藤志げるはリクエストに応えて『お山の大将』。次に『芸道一代』の声がかかったところで、「ちょうど時間が」と終了。

・三遊亭歌も女は、なにか妙な色気があって、嫌いではないが、寄席の高座に上がってるのを眺めるのは、やや落ち着かない感じがする。あとは、のんびりした口調がときに間延びしているように感じるとか、頭を振ったときにうしろから前に垂れ下がる髪の毛をなんとかしてもらいたいとか、手拭いの扱いが雑に見えたとか。いや、嫌いではないのだが。(髪の毛に関しては、他の女性の噺家でも同じように思うことは多い。お洒落なのはよいとして、うまくまとめられないものかな)

・ストレート松浦は、中国曲独楽、デビルスティック、シガーボックス。

・桂文生の高座は、うっかりうとうとしてしまい、失敬ながら内容失念。ただ、高座を降りるときになぜか自分でめくりをめくって行ったのだけ覚えている。

・昭和のいる・こいるは、『船頭小唄』のネタを演った。『船頭小唄』は、近藤志げるも冒頭で唄っていたな。

・三遊亭小円歌は、『四季の歌』(『猫じゃ猫じゃ』などへメドレー)、新内流し(かちかち山)、名人出囃子集、『さんさ時雨』、踊り『奴さん』。聴いていて大変楽しくはあるが、もう少し理解を深めるべく勉強したい。

・三遊亭圓歌は歴代会長の話など、いつものネタ。

・ロケット団は、四字熟語〜選挙〜山形弁のネタ。

・金原亭世之介は、林家彦六、当代馬生、立川談志の高座に上がる際の形態模写(話し始めの声帯模写も含む)が面白かった。

・翁家和楽社中は、和楽、和助、小楽。演し物は傘(鞠の回し分け、ますの回し分け)、鞠の曲芸、ナイフの交換取り。

・林家木りんは、長身で手足の長そうなプロポーションからして噺家に向いていないような印象があったが、それがどう噺家稼業に馴染んで行くのかな、という興味はある。

・林家正楽は、注文で恵比寿様、ほうずき市、ミニーちゃんを切った。

・大空遊平・かほりもいつものネタだったが、後半、遊平の実家ネタを長めにやっていた。その部分も面白かったが、爆笑まではいかなかったかな。

・春風亭百栄の漫談は、ボケの話を自分がボケてしまったように話すネタと、回転寿しでオカキャビアというネタがあったが誰もちゃんと発音できないというネタ、スピード違反で捕まったら奥さんが余計なことを言うというお馴染みのネタ。

・林家木久蔵『後生鰻』は、赤ん坊ではなくて鰻屋の奥さんを縄でしばって川へどぼん、というものだったが、それは無理がないかな? といつも思う。あと、鰻が絶滅危惧種になりそう、という話を入れてもいいのにな、と思った。

・すず風にゃん子・金魚の漫才は、後半のバスツアーネタはなく、ゴリラのモノマネに入っていた。

・三遊亭歌之介『爆笑龍馬伝』は、芸名を三平と圓歌から取って平歌(へいか)にしたら…… というネタが可笑しかった。

・鏡味仙三郎社中は、仙三郎のみ。傘の曲芸(まり、鉄輪、枡、茶碗の回し分け)、土瓶

以下、この日の演目。

・昼
近藤志げる・・・・・野口雨情物語
三遊亭歌も女・・・・狸札
春風亭一之輔・・・・道灌
ストレート松浦・・・ジャグリング
柳亭燕路・・・・・・間抜け泥
桂文生・・・・・・・失念
昭和のいる・こいる
 ・・・・・・・・・漫才
桃月庵白酒・・・・・牛ほめ
春風亭一朝・・・・・祇園会
三遊亭小円歌・・・・三味線漫談
三遊亭圓歌・・・・・漫談
(仲入り)
金原亭馬治・・・・・強情灸
ロケット団・・・・・漫才
古今亭菊春・・・・・浮世床
金原亭世之介・・・・漫談、形態模写(名人の登場)
翁家和楽社中・・・・太神楽
金原亭馬生・・・・・安兵衛狐
大喜利・・・・・・・茶番

・夜
林家木りん・・・・・寿限無
三遊亭天どん・・・・名探偵の不幸
三遊亭丈二・・・・・目薬
林家正楽・・・・・・紙切り
隅田川馬石・・・・・あわびのし
川柳川柳・・・・・・ガーコン
大空遊平・かほり
 ・・・・・・・・・漫才
林家種平・・・・・・お忘れ物承り所
春風亭百栄・・・・・漫談
ぺぺ桜井・・・・・・ギター漫談
古今亭菊之丞・・・・棒鱈
(仲入り)
林家木久蔵・・・・・後生鰻
ダーク広和・・・・・奇術
入船亭扇遊・・・・・ちりとてちん
桂文楽・・・・・・・看板のピン
すず風にゃん子・金魚
 ・・・・・・・・・漫才
三遊亭歌之介・・・・爆笑龍馬伝
鏡味仙三郎社中・・・太神楽
三遊亭白鳥・・・・・白鳥版火焔太鼓
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸