2014年09月08日

浅草演芸ホール9月上席昼夜

浅草演芸ホール九月中席昼(仲入り前から)および夜神田錦町で、珍しく真っ昼間に打ち合わせを終え、須田町まで歩いてまつやで一杯、と来たら寄席にしけ込むしかないよなあと、神田駅から銀座線に乗って浅草へ。

お目当ては夜席の柳家喬太郎の芝居だが、せっかく昼間時間が空いたので、昼席の仲入り前の、相変わらず爆笑の三遊亭歌武蔵『宗論』から見物(息子が妙な西洋人口調なのと、それなのにそこには一切触れられないところとか、「今」という言葉を出すために「玄関……? 台所……?」とやるところなどな、何度聴いても好物)。仲入り後の三遊亭歌る多『つる』や春風亭一之輔『鈴ケ森』も心地よかったし、三遊亭小円歌〜圓歌の流れも相変わらずのお楽しみ。早めに来てよかった。

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夜は、前座の最中に招待券の客を入れるというのはいつもの浅草の風景だが、前座の柳家緑太がそのざわざわする中でしっかりと『狸の恩返し』を演っていたのが頼もしかった。

その後も、いつもとひと味違うホームランの漫才、これまた噺は耳に馴染んだ古典通りなのになにかがひと味違う隅田川馬石『子ほめ』、名人芸と言ってよいだろう名古屋弁が可笑しい三遊亭圓丈の『名古屋版金明竹』、ぼそぼそ喋る地噺が聴こえるか聴こえないかなのに妙に可笑しい柳家喜多八『目黒のさんま』、昨夜の秋雨の鬱陶しさを切り払うかのような小気味のよい春風亭一朝『芝居の喧嘩』(噺の途中にほんの少し『たがや』を入れ込んだのがまた可笑しかった)、宝塚ネタを繰り出したすず風にゃん子金魚の漫才などなど、満足度の高い高座が目白押しだったし、いつも通りのペペ桜井、さらっと演った鏡味仙三郎社中の曲芸やダーク広和のマジックが差し挟まれる塩梅もよかった。私は苦手な桂文楽の高座でさえ、心地よさを感じた(この日は『替わり目』)。

膝替わりの柳家小菊は、声が小さいのはいつも通りだがちょっと熱の隠った意気がいい感じで、それがまた続くトリの柳家喬太郎の熱演によく合っていたとも思う。

で、その喬太郎、20分くらいの持ち時間のうち10分に及ぶマクラで、東宝チャンピオンまつりや東映まんがまつり、喬之助とウルトラマンガチャガチャの話(初代ウルトラマンと新マンのスペシウム光線の形の違いをちゃんと表現してる、とか)、演芸ホールに古今亭志ん朝やら立川談志やらのフィギュアのガチャガチャがあったら面白い、などをネタにして、途中二階席のカップル客を思いっきりいじったりしながら客席を爆笑の渦に叩き込み、さあどんな爆笑ネタで来るのか、と思いきや、なんと『孫帰る』を演り始めて意表を突かれる。

あとから考えたら、マクラの最中「今日は古典はやらないと思う」「人情噺でも聴けると思ったらこんなガチャガチャの噺で(残念でしょうけど)」と言ってたらひとり帰った客がいたので、それへの当てつけで敢えてじっくり聴かせる人情話を持ってきたのかもしれないと思ったが、穿ち過ぎかな? 最初からこの流れで『孫、帰る』を演るつもりと考えるのが自然かもしれないが、ともかく、あの爆笑のマクラのあとにすっと始まり、孫とお爺さん、そして最後にお婆さんがだけが出てきて、マクラを引きずるかのような爆笑場面(猫のたまを唐突に「ダーク広和」や「春風亭一朝」「柳家喜多八」と呼んでみたりとか、やけに細かい喫煙描写を演じながら神奈川や東京の禁煙施策に対する文句を言ってみたりとか)も織り交ぜつつ、あざとい泣かせもなく淡々と話を進ませながら、終盤の孫の台詞と約40秒もの間の芝居に自然と泣かせられる『孫帰る』に、気持ちをとても心地よくもみくちゃにされた。

この一日だけを聴いても、この十日間はさぞかし素晴らしい芝居だった(あと二日あるから「になる」か)のだなあと、演芸ホールをあとにした。

備忘としては−

・季節柄、翁家勝丸も鏡味仙三郎社中も、揃って五階茶碗の芸で「十五夜は満月の形」をネタにしていた。

・そして金魚の頭は“中秋の名月と月見団子”であった。ネタは8月中席で見たのと同じベルサイユ宮殿の話題からゴリラ振りへの以降が無駄に鮮やかなやつであったが、金魚が宝塚マニア、という話題からさんざん宝塚の歌を歌うくだりが妙に可笑しかった。

・昼の膝替わりの小円歌は、『相撲甚句(二上り甚句)』、新内流し(かちかち山の狸)、出囃子各種(文楽『野崎』、志ん朝『老松』、志ん生『一丁入り』。『老松』と『一丁入り』では前座の金原亭駒松が太鼓で登場。本人も打ちながら首を傾げていたし、あまり間がよくなかった気がする。あと圓歌『二ツ巴』をドロドロと)、『さんさ時雨』。最後に『かっぽれ』を賑やかにひと舞い。

・本文で「私は苦手な桂文楽の高座でさえ、心地よさを感じた(この日は『替わり目』)」と書いたが、酒呑みのことを話すくだりで「最近は学生なんかが一気飲みをやっている」というのはいただけない。そう語る主旨がなにかあるのかもしれないが、もう少し時代の移り変わりを見たほうがよいと思った。

・ダーク広和のマジックは、わざわざラジコンで“ファンカードを演る手”を運んでくるのが可笑しかった。

・夜の膝替わりの小菊は、『金来節』、都々逸(ひぐらしが鳴けば来る秋わたしは今日で 三晩泣くのに来ない人、傘を買うなら三本買うて御座れ日がさ雨がさ忍びがさ)、『淡海節』、『ぎっちょんちょん』『角力甚句』。

以下、この日の演目。

-昼席
三遊亭歌武蔵・・・・宗論
(仲入り)
三遊亭歌る多・・・・つる
翁家勝丸・・・・・・太神楽曲芸
春風亭一之輔・・・・鈴ヶ森
三遊亭歌司・・・・・漫談
三遊亭小円歌・・・・三味線漫談
三遊亭圓歌・・・・・中澤家の人々

-夜席
柳家緑太(前座)・・狸の恩返し
柳家右太楼・・・・・真田小僧
柳家喬之助・・・・・寄合酒
ホームラン・・・・・漫才
隅田川馬石・・・・・子ほめ
春風亭栄枝・・・・・漫談
ぺぺ桜井・・・・・・ギター漫談
柳亭左龍・・・・・・普段の袴
桂文楽・・・・・・・替わり目
鏡味仙三郎社中・・・太神楽曲芸
三遊亭圓丈・・・・・名古屋版金明竹
(仲入り)
三遊亭丈二・・・・・漫談
すず風にゃん子金魚
 ・・・・・・・・・漫才
古今亭志ん橋・・・・出来心
柳家喜多八・・・・・目黒の秋刀魚
ダーク広和・・・・・マジック
春風亭一朝・・・・・芝居の喧嘩
柳家小菊・・・・・・粋曲
柳家喬太郎・・・・・孫帰る
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸