2014年10月30日

神田連雀亭ワンコイン寄席、2014年10月30日(木)

神田連雀亭ワンコイン寄席、2014年10月30日(木)今月11日に開亭した落語・講談二ツ目専門の寄席「神田連雀亭」を、昨日ようやく覗いてきた。

場所は名前のとおり神田連雀町−現在の神田須田町で、鶏鍋のぼたんから先頃復活した神田やぶそばに抜ける路地に入り口がある。一階にやぶそばに面した「マルシャン」というイタリア料理屋が入っているビルの二階で、席数は33ほど*。一列8人×4列(最後列のみ9人)の幅広の設えなので、最後列に座っても高座はかなり近い。当然、高座にはマイクなし。お囃子は(多分)録音したものがスピーカーから流れてくるが、高座が始まると生声での落語や講談が楽しめる。

*11/4附記。この日は椅子の数を数えて「席数は33ほど」と書いたが、その後連雀亭の「施設利用案内」をダウンロードして参照したところ、「 【客席キャパ】パイプ椅子40席」とあった。念のため、会場側の席数設定もここに記しておく。また11/2のきゃたぴら寄席では、42人の大入り満員だったとの由。

昔は寄席といえば、これくらいの規模が多かったとも聞くし、なにしろ遊びに行きやすい木戸銭だから、ありし日の“寄席に遊びに行く気分”ってのはこんな感じだったのかな、などとも妄想する。

ただし客席は畳敷きではなくパイプ椅子だし、照明は明るいしなにより出来上がったばかりで場内はきらきらとした感じできれいなので、たとえば正岡容が『随筆寄席風俗』で書いていたような「ほんとうに、昼席の、やるせない薄ら明かりほど、夏といわず、秋といわず、冬といわず、しみじみと都会の哀しみを知らせてくれるものはない」といった昔の寄席の風情は感じられない。

そうした風情を感じられはしないが、しかし新しい場所を作っていこうという意欲はひしひしと伝わってきた。ちなみに私が到着したときは、受付をこの日のトリの橘ノ圓満が担当されており、そういうところにも(仕掛人の古今亭志ん輔のもとに)二ツ目が集って手作りで落語・講談をもり立てて行こう、という意志のようなものが立ち上っていたように思う。

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さてこの日高座に上がったのは、桂翔丸、柳家かゑる、橘ノ圓満の三人。演目とそれぞれの所属、略歴は下記のとおり。

桂翔丸・・・・・・・熊の皮
(芸協、桂幸丸門下、2009年入門、2013年二ツ目)
柳家かゑる・・・・・たまげほう(月亭太遊作)
(落協、柳家獅堂門下、2007年入門、2013年二ツ目)
橘ノ圓満・・・・・・替わり目
(芸協、三代目橘ノ圓門下、2002年2月入門、2006年二ツ目)

この日の中では一番入門が若い桂翔丸は、『熊の皮』の中で「長屋」というところをなぜか「楽屋」といい間違い、二度めのいい間違いのあとからちょっと噛んだり間を外したりする場面も多く冷や冷やしたが、三度めにいい間違えたときについにそれをネタにして笑いを取り、それから以降はサゲまで滑らかに進み、すっきり着地。

やたらに元気のいい柳家かゑるは、東京では珍しい『たまげほう』(上方の月亭太遊作。くわしくはこちら参照)という実にわけのわからない(ところが魅力)の噺に、客をぐいぐいと引っ張るような力技で引き込んでくれたし、連雀亭のビラ配りにまつわる噺で組み立てたマクラも爆笑だった(書いちゃまずいかもしれないが、「やぶそばは客が並んでると近くの六文蕎麦から出前を取って出す」なんてところは笑った)。

トリの橘ノ圓満は、私など素人の耳には真打と言われりゃなるほどそうかと思ってしまうような、亭主と女将の人物やそれぞれの場面場面が鮮やかに浮かんでくるかなりしっかりとした『替わり目』を30分近くじっくりと聴かせてくれた(ちなみに翔丸とかゑるはそれぞれ15分ずつ)。

平日昼の「ワンコイン寄席」が、二ツ目三人が高座に上がって都合一時間で木戸銭500円。平日夜と土日祝昼の「きゃたぴら寄席」が四人一時間半で木戸銭1,000円(どちらも前座はなく二ツ目だけで回す模様)。一日から二十日までは毎日やっているし(二十一日から月末は貸席)、一口に二ツ目といっても実力としては真打に近い人もいるわけだから、気楽かつ身近に落語や講談の芸を楽しめる試みとして、また落語好きとしても普段あまり触れる機会のない二ツ目の方々の芸を日常的に楽しめる場として(そして何より二ツ目の方々の貴重な経験の場として)、一度覗いただけでも大変素晴らしい試みだと思う。この日は平日の昼ということもあるだろうし、入りは半分よりちょいと少ない感じだったが、この先落語好きの間にこの場所の存在が定着して、長く続くことを希望する。

ただ、家の近所ならまめに(下手すりゃ毎日)通うと思うが、電車に乗って小一時間かけて出かけて三席か四席、だと、それだけを目的にして出かけるとなると足が向きにくいかもしれない。が、幸い立地としては(神田駅や秋葉原周辺から神保町まで範囲を広げて考えれば)ほかの目的もいくらでも見つかるので、応援する意味でもちょくちょく通いたいなと考えている。
posted by aokiosamublog at 23:00| 落語/演芸