2022年06月10日
6月まとめ(1〜10日)
上町〈タナカロボ〉、久美かおり『髪がゆれている』、番匠義彰『恋とのれん』『太陽を抱く女』、高円寺〈マキノウチ〉、酒井俊・関島岳郎・高岡大祐 於入谷〈なってるハウス〉、熱血親切女将。
6月1日(水) 深夜起床しTV番組の録画を片付けたのち朝方就寝→朝9時半起床。マヌカハニー、白湯→ぶなしめじと油揚のおつけ、卵かけご飯、塩昆布、海苔→風呂→O形サイト更新(絵日記)→『スノーピアサー』(原題『Snowpiercer』、原作:ジャック・ロブ/バンジャマン・ルグラン/ジャン=マルク・ロシェット『Le Transperceneige』、監督:ポン・ジュノ。ジム・ハイ、ピーター・ハリン、クリス・エヴァンス、ジェイミー・ベル、ロバート・ラッセル、マグダ・ヴァイジェルトヴァ、オクタヴィア・スペンサー、マーカントニー・レイズ、ジョン・ハート、ハルナ・ホンクー、カレル・ヴェゼリィ、ユエン・ブレムナー、ヴラド・イヴァノフ、アドナン・ハスコヴィッチ、ティルダ・スウィントン、クラーク・ミドルトン、スティーヴ・パーク、ミゲル・ナヴラティル、ルーク・パスカリーノ、ソン・ガンホ、パク・ソンタク、コ・アソン、ポール・ラザール、アリソン・ピル、エド・ハリス。2003、韓米仏捷CJ Entertainment他)。地球温暖化対策として世界中にとある薬剤を撒いたら地球が凍ってしまったとか、生き延びた人だけを乗せた列車が強固な階級秩序を保ちながらぐるぐる走り回っているとか、設定だけ冷静に捉えるととんでもない話なのだが、それをそうと思わせない世界構築の力がものすごかった。その中で反乱が企てられ、しかし戦いとしては列車の中だから前進するか退却するしかない、という条件の中での表現も面白いし(スローモーションの殺陣とかあわやというところで松明を使った火祭り的な戦いへの展開とか)、先頭車両に近づくにつれ列車内の環境が美しくなっていきそこにいる人々(上級乗客?)が反乱者たちに無関心になったり、しかし最先頭車両までたどり着いたところで無関心だったはずの上級乗客がいきなり追い詰めてきたりというのも、前後方向の移動だけという制限を物語の起伏にうまく利用している(物語の本筋と関係あるのかどうか、体制側の主要な女性がみんな少しおかしな感じなのも、なにか意味があるのだろう)。私がポン・ジュノ監督作を観たのは、時系列でいうと本作で五本めになるが(このあとの『パラサイト』も入れると六本)、素材も物語も表現方法も一見共通するものがなく、それでいてそれぞれの完成度が高く−というか観終えたあとの満足感がかなりのもので、なかなか底知れない監督であると思う→『ザ・タイガース ハーイ! ロンドン』(監督:岩内克己。沢田研二、岸部おさみ、森本太郎、瞳みのる、岸部シロー、左とん平、藤田まこと、杉本エマ、久美かおり、小松政夫。1969、東宝)。アイドル映画、という感想のほか、特になし。1970年くらいのロンドンの風景の資料としては役に立ちそうではあるのと、久美かおり『髪がゆれている』が聴けるのと、岸部兄弟が生まれながらに持つタレント性を確認できるのが本作の価値、かな→トマトとピーマンとキャベツのサラダ(胡麻ドレッシング、ちりめんじゃこ)、ニンジンときゅうりと新生姜の浅漬け、冷やし納豆刻みそば(葱)、ビール中瓶×1→ビール一本だけなのに眠くなり、食後しばし就寝→夜9時過ぎ起床→『三羽烏再会す』(原作:北条誠『明日の花びら』、監督:番匠義彰。川喜多雄二、渡辺文雄、大木実、サトウ・サブロー、遠山文雄、伴淳三郎、手代木国男、沢村貞子、中川姿子、藤乃高子、杉田弘子、紙京子、稲川善一、奈良真養、福岡正剛、中村正紀、草間百合子、日守新一、小林十九二、三笠朱実、水上令子。1956、松竹)。大学のラグビー部の仲間が社会に出てから経済的な悩みや結婚の悩みを悩みつつ、金で困っている人を若輩者の浅知恵では救えなかったが結局身体を張って金持ちのドラ息子一味を叩きのめして救うという物語で、スカッと痛快でありながら、安請け合いが過ぎて無力さを味わうという苦さもあるのが、観ている最中は疑問だったが観終えてからああそうかと腑に落ちた(安請け合いが解決に至らなかったときに、「魚力」という魚屋が番台を持っている姿がちらっと映るのだが、それが「無力」に見えるのが面白い)。三人の主人公に四人の女という恋の鞘当の描き方も楽しく、ひとりあぶれた喫茶店の春坊=中川姿子(しなこ)が可哀想だが、大木実を諦めたところで退場ではなく終幕で渡辺文雄の婚約者役の藤乃高子よりひと足早くカツ丼を持って登場するのは花を持たせたのかなとなんだか暖かい気持ちになった。その中川姿子が大木実を諦める場面で歌うのだが、これがまたしみじみ感動的。杉田弘子と紙京子の姉妹が美しく、特に杉田弘子の少し出過ぎかと思われる色香が結果的にはいい塩梅。伴淳三郎や沢村貞子などの名優の扱い方も実にちょうどよいという感じで、とても心地よい時間を過ごせた一本だった。監督デビューからここまでで三本、いずれも完成度の高さに驚いた→『十三人の刺客』(監督:工藤栄一。高松錦之助、丹波哲郎、片岡千恵蔵、月形龍之介、河原崎長一郎、三島ゆり子、菅貫太郎、内田良平、北竜二、原田甲子郎、堀正夫、明石潮、神木真寿雄、高橋漣、西村晃、嵐寛寿郎、阿部九州男、片岡栄二郎、春日俊二、加賀邦男、汐路章、和崎俊哉、有川正治、小田部通麿、丘さとみ、里見浩太朗、水島道太郎、沢村精四郎、山城新伍、水野浩、藤純子、語り手:芥川隆行。1963、東映)。引きの絵が多く、客観な突き放したような視点による緊張感が印象に残るが、静と動の塩梅が面白く、いったん動き出すとぐっと引き込まれる感じ。中盤少し不思議とのんびりした感じが漂うが(主に片岡千恵蔵の台詞回しによる)、終盤約30分に及ぶ立ち回りは、敵方を迷路のような袋小路のような場所に誘い込みつつの攻防に興奮した。とはいえ、引きの絵が多かったり台詞が聞き取り難かったりで細部をつかめなかったところも多いので、話が頭に入った上でもう一度観てみたいと思う→朝方4時半就寝。
6月2日(木) 朝8時半起床。マヌカハニー、蕎麦湯→海苔の吸い物、卵かけご飯、海苔、塩昆布→昼、クルマで世田谷区役所(駐車場無料で助かった)。医療用コルセット代の還付手続き。生まれて初めてマイナンバーとやらを使用した。手続きは特にむつかしいところなし→帰途、世田谷通り沿いの〈サミット〉にクルマを駐め、まずは〈タナカロボ〉で昼(鶏そぼろ丼、鯛煮干しの塩そば)。鶏そぼろ丼は「15食限定」なのだが、そう謡う割には普通の味。でもこれが200円はお得か。今日はお腹が空いていたのでちょうど助かった→帰宅、風呂→『ブリジット・ジョーンズの日記』(原作:ヘレン・フィールディング、原題『Bridget Jones's Diary』、監督:シャロン・マグワイア。レネー・ゼルウィガー、ジェマ・ジョーンズ、ジェームズ・フォークナー、ジム・ブロードベント、コリン・ファース、シャーミアン・メイ、ヒュー・グラント、ポール・ブルック、フェリシティ・モンタギュー、シャーリー・ヘンダーソン、サリー・フィリップス、ジェイムズ・キャリス、エンベス・デイヴィッツ、パトリック・バーロウ、リサ・バービュシア、クレア・スキナー、ドナルド・ダグラス。2001、英米仏United International Pictures/Miramax/Mars Distribution)。原作小説の題名と映画化されたことだけ知っていて、中身はまったく知らなかったが、観終えてみるとまあだいたいそんな感じという感じだった。今となっては三十代女性の生活をそのまま写しとったような表現を目指したのだなと思うが、20世紀末〜21世紀初頭にはそれ(スターでない女性像を描く)が新鮮だったようだし、そこを勘案して観ると男性が見たくない女性像≠ェきちんと描かれている点は面白いと思った。ただ(原作は知らないが)主人公の友人たちも同じ三十代女性でそれぞれうまく行っていない側面もあるようだから、主人公を巡る男たちだけでなく周囲の女性たちへの目配りがもっとあってもよかったかなとは思った→小松菜胡麻汚し、ニンジンときゅうりと新生姜の浅漬け、豚肩ロース生姜焼き、キャベツ千切り、玉葱と油揚のおつけ、ご飯、納豆、ビール中瓶×2、芋焼酎水割り×1→食後早々に就寝。最近はこのペースになってしまった。夕方6時過ぎ→小一時間で起床→久美かおり『髪がゆれている』の譜面を作成。イントロと歌メロは聞き取ったが、コードはさっぱりわからず、日本語の題名で検索しても見つからなかったが、ローマ字と英語で「kamigayureteiruwa chords」で検索したら見つかったのでカンニング→『母と子の窓』(原作:竹田敏彦、監督:番匠義彰。高橋貞二、杉田弘子、中川弘子、川口のぶ、田村高廣、吉川満子、設楽幸嗣、浅茅しのぶ、高橋豊子、水戸光子、山形勲、二木てるみ、植木マリ子、須賀不二夫、藤本満州男、沢村貞子、春日千里、小林トシ子、大杉莞児、本橋和子、北竜二、渡辺文雄、草香田鶴子、竹田法一、高木信夫、稲川善一、新島勉、太田博之。1957、松竹)。母子寮が舞台の、社会の片隅で苦労して生きている人たちとそれを支援する人たちの物語、だけでも一本の感動的な映画が出来ように、その中での様々な事情を(その中での違いの罪のない悪意も含めて)丁寧に描きつつ、持たざる者たちへの持てる者の振る舞いもまた、金持ちの悩みと気晴らしも採り上げた天国と地獄的な鮮やかな表現も交えつつ丁寧に描く。そして優しさが決して救いになるわけではないという点も冷徹に描きつつ、最後にはきちんと感動をもたらす。「社会の片隅で苦労して生きている人たちとそれを支援する人たちの物語」は本作以前にもいろいろあり、それを徹底的に研究したのだろうと思わせられる眼差しと表現の細かさに感心し、また心動かされた。そして人にとっての幸せとは何かと考えさせられるが、教条主義的な臭みはなく、登場人物それぞれの行動や思考を楽しんで眺めつつ、自然と考えさせられる。一言でいい表せるような単純な魅力はないが、だからこそ傑作と言いたい作品であった→『坊っちゃん』(原作:夏目漱石、監督:番匠義彰。南原伸二、英百合子、島村俊雄、水上令子、後藤泰子、左卜全、伴淳三郎、伊藤雄之助、トニー谷、大泉滉、三井弘次、桂小金治、草香田鶴子、有馬稲子、沢村貞子、関千恵子、三谷幸子、杉浦直樹。1958、松竹)。原作のあらすじをなぞったような制作ながら、原作の文体のリズムの心地よさも感じた。坊っちゃん役の南原伸二(南原宏治)はじめ登場人物も原作の印象にかなり近いような気がする。坊っちゃんの東京での少年期や就学時、あるいは松山を去って東京に戻ってからのことが描かれておらず、感想にどう影響するかなと思ったが、却って余韻として味わうことができたとも思う(が、それは鑑賞者それぞれで異なるだろう)。小説の映画化としては、かなりのお手本ではなかろうか→午前4時就寝。
6月3日(金) 朝9時半起床。マヌカハニー、白湯→玉葱と油揚のおつけ、卵かけご飯、海苔→『白い炎』(原作:井上靖、監督:番匠義彰。高千穂ひづる、大木実、永井達郎、福岡正剛、小野良、夏川静江、千村洋子、山鳩くるみ、田村高廣、井上正彦、水上令子、有沢正子、笠智衆、伊久美愛子、清水幹世、川金正直、小林十九二。1958、松竹)。最終的に救いを拒んだ人と救われるのを受け入れた人がいて、結局前者は救われなかったが、しかしどちらも救おうとした人たちの心の美しさと不器用だが真摯な気持ちに感動させられた。きれい事といえばきれい事だが、表現においてきれい事が決して低俗なものとして切り捨てられるものではない、ということを考えた。また何気ない台詞から深い何かを受け取るような場面が多く、たとえば「何か知らんが、人間一生のうちにはいろんなことがあるさ。死のうと思うことだって、恋愛することだってある。なにしろ人間は生身だからなあ、始末が悪い」なんていう台詞も、笠智衆の口調だからというのもあるかもしれないが、しみじみと染みる→菊水道ポテトチップス、ビール中瓶×1、金宮酎ハイ×1→玉葱と油揚のおつけ、洋食屋風ナポリタンプレート(キャベツの塩昆布和え、トマト、鴨燻製、ナポリタン=ハム、ピーマン、長葱、どんこ、ニンニク)、金宮酎ハイ×3。ナポリタンのコツをようやく掴んだ。本日はどんこの戻し汁を全部加えたので少し薄めになったが(味見してから最終的にケチャップを足した)、もう少しケチャップ風味が強くてもいいな→食後就寝→日付変わる前に起床→『恋とのれん』(監督:番匠義彰。桑野みゆき、山下洵一郎、淡島千景、浦辺粂子、大泉滉、E・H・エリック、小坂一也、北龍二、九条映子、高橋とよ、水上令子、山本豊三、牧紀子、伴淳三郎、峯京子、佐野周二、清川新吾。1961、松竹)。若い二人の勘違いによる衝突とか、周囲の親切だがお節介で早とちりの行動とか、そんなものに起因するすれ違いはありつつ、ほぼすべての人の心がきれいでうれしくなる。これまた「表現においてきれい事が決して低俗なものとして切り捨てられるものではない」ということを痛感する作品だった。桑野みゆきは作品全体の雰囲気からするとややきつく、表現的な調和を考えるともう少し可愛らしさがあってもよかったような気もするが(『抱かれた花嫁』の有馬稲子と比較しているのかもしれない)、このきつさは桑野みゆき扮する松岡由利の立場や思惑から考えると妥当だと思い直す→『クレージーの花嫁と七人の仲間』(監督:番匠義彰。植木等、峯京子、伊藤素道、青島幸男、石橋エータロー、ミッキー・カーティス、ザ・ピーナッツ、ハナ肇、谷啓、高千穂ひづる、山本豊三、倍賞千恵子、渡辺晋とシックス・ジョーズ、スマイリー小原とスカイ・ライナーズ、藤木孝、淡路恵子、平岡精二クインテット、飯田蝶子、犬塚弘、伴淳三郎、中島潤、安田伸、水原弘、三木のり平、八波むと志、スリー・ファンキーズ、中尾ミエ、桜井センリ、高橋とよ、世志凡太。1962、松竹)。「七人の仲間」と言いながらクレージー内で映画の中で仲間なのは植木等、ハナ肇、谷啓の三人だけだし、特になんだという作品ではない(と思われる)が、楽しいひとときを提供するという点では、劇中登場する三組のバンド(渡辺晋とシックス・ジョーズ、スマイリー小原とスカイ・ライナーズ、平岡精二クインテット)や歌手たち(ザ・ピーナッツ、藤木孝、スリー・ファンキーズ、中尾ミエ)の演奏も含めて、一級の娯楽作と思った。寿司屋の閉店パーティでザ・ピーナッツと中尾ミエが自然に踊っている場面も、別に注目させたい要素ではないと思うが、実にいい。ごく短い出演だが、三木のり平と八波むと志の「国定忠治」もうれしい。東宝作品とはまたひと味違ったクレージーキャッツを楽しめるという点でも貴重と思う→ニンジンときゅうりと新生姜の浅漬け、カップヌードルPro、ビール中瓶×2→明朝の粥の支度してから午前4時頃就寝。
6月4日(土) 朝9時半起床。マヌカハニー、白湯→海苔の吸い物、どんこ粥(新生姜、昆布出汁)、梅干し、生卵→風呂→昼過ぎ高円寺に出て、まずは初訪問の〈マキノウチ〉で一杯。〈Second Line〉で知り合った女将の店だが、先方あまりよく覚えていなかったのが、酒場の出会いらしくて面白い。カウンターだけの、小窓から明かりの入る居心地のよい店で、料理もいい塩梅にこぢんまりとおいしく、女将の応対も気持ちよく、よい酒場と思った。金宮の蔵元である宮崎酒造の清酒を主に出しているというのも、東京では貴重。高円寺を訪れる楽しみがひとつ増えた。ポテトサラダ、炙り三種盛り、ビール大瓶×1/2、御酒×2→高円寺駅でちんとんお馴染み三人組と落ち合い、駅構内の〈デニーズ〉で打ち合わせ(クラブハウスサンドイッチ、ビール中瓶×1)。立ち退き問題は「五年の定期借家契約」への変更に落ち着きそうで、五年営業を続けられるならあとは女将の判断でよいのでは、ということになって、これはひとまず解決。お手洗い改修費用は、一口いくらという枠を設けない、お礼は物品ではなくお礼の会の開催という形、という方向にまとまる。あとは集金・管理方法→話が一応まとまったところで〈ちんとんしゃん〉に移動。ここから記憶はあやふや。ビール中瓶×1、御酒×3→さらに〈鳥渡〉に移動し、焼酎ロック×1→タクシーで帰宅となったが、途中〈ガーデン・オブ・ジョイ・キッチン〉の前を通ったら寄りたくなり、白葡萄種×1→徒歩で帰宅。帰宅後即就寝。
6月5日(日) 終日宿酔いで横臥→朝、海苔の吸い物、あさりとほうれん草のおむすび→昼、どんこ粥(卵)→夜、豚生姜焼き、キャベツ千切り、春雨サラダ(卵焼き、ハム、きゅうり)、どんこと油揚のおつけ、ご飯→風呂→深夜ようやく調子が戻り、『太陽を抱く女』原案:神坂三郎、監督:番匠義彰。真理明美、小瀬朗、久保菜穂子、三ツ矢歌子、山本豊三、佐野周二、前田嘉晴、小坂一也、柳沢真一、杉浦直樹、清水まゆみ、穂積隆信、大泉滉、菅原文太、林家珍平、初名美香、岩本多代、高木二朗、沢村貞子。1964、松竹)。喜劇調の軽い手応えの作品ではあるが、裕福で平和な家庭にちょいと美人で気の利いたお手伝いさんがぽっと入るだけでその家庭が崩壊していく様は、見様によっては戦慄的である。逆に言えばそういう戦慄的な物語を軽い手応えの喜劇に仕立て上げる番匠義彰の腕前を味わう一本と言えようか。二組の夫婦の仲が悪くなり、夫ふたりは仕事を追われそうになり、仕舞いには婚約の解消にまで発展しそうになりながら、あわやのところでするすると解決していく様は観ていてとても心地よい。終幕に主人公のお手伝いさん(真理明美)の母親(沢村貞子)が登場し、二組の夫婦仲も戻れば婚約も成立し、次男坊の絵も売れて収まるところに収まってと大団円を迎えてからの宴の準備でみながあたふたしている様子ですっと終わる終わり方も見事→さらに調子が出てきたので、ビール飲みながら『恋とのれん』を再見。午前4時頃就寝。
6月6日(月) 朝10時起床。マヌカハニー、白湯→どんこと油揚のおつけ、ご飯、うずらの卵×3、海苔→連絡業務→『ウナ・セラ・ディ東京』(監督:番匠義彰。鰐淵晴子、山形勲、穂積隆信、園井啓介、槙芙佐子、中西杏子、高野真二、待田京介、久保菜穂子、吉田裕一、野々村潔、水木涼子、永井秀明、水上令子。1965、松竹)。今回観た番匠義彰作品十二本の中で比べると、最もありきたりな、番匠義彰らしさが感じられないというのが第一印象。冒頭に、主要人物である山形勲が出てくるもののすーっと通り過ぎるだけだったり、待田京介の悪の部分が際立っていなかったり、園井啓介が主役を張るほどいい男でなかったり、ウナ・セラ・ディ東京≠ネのに札幌の一夜のほうが印象的だったり等々、好みの問題もあるけれども、説得力にも鮮やかさにも欠けていたように思った。これが劇場映画作品としては最後の仕事(このあとテレビドラマに活動の場を移す)だというのも、なにかを示しているのかもしれない→丸ちゃん正麺旨塩味(コーン缶、胡麻、刻み葱)→『さそり』(監督:水川淳三。伊藤雄之助、菅井きん、呉恵美子、大泉滉、石立鉄男、浜田滉、佐藤友美、石橋エータロー、曽我廼家一二三、露口茂、三遊亭歌奴、牟田悌三、加藤武、加賀まりこ、桜井センリ。1967、松竹)。伊藤雄之助があっさり死んでしまうまでは艶笑喜劇としてとても面白かったのだが、死んだあとは別の映画になってしまった。その狙いがわからなかったのだが、野村芳太郎と森崎東の狙いはなんだったのだろうか。わかるようなわからないような。佐藤友美はこれが映画デビューだが、大した度胸で恐れ入った→『クレージーの花嫁と七人の仲間』再見。やはりただただ楽しい→キャベツとピーマンとハムのオイスターソース炒め(トマト乗せ)、ニンジンと新生姜とニンニクの浅漬け、鰯丸干し、どんこと油揚のおつけ、ご飯、納豆、ビール中瓶×1、金宮酎ハイ×1、金宮お湯割×1→夜10時就寝→深夜起床し風呂→『温泉巡査』(監督:原田治夫。藤江津子、伊藤雄之助、川崎敬三、高橋元太郎、姿美千子、太平洋子、三升小粒、潮万太郎、お笑いタッグ・マッチ、三角八郎、角梨枝子、竹里光子、宮川和子、浜田ゆう子、池上多加子、飛田喜佐夫、螢雪太朗、早川雄三、加茂良子、大川修、青空千夜・一夜、南利明。1963、大映)。やはりばーんと面白いのは開幕直後の高橋元太郎の歌で、あとは伊藤雄之助の可笑しさを追っていくという感じか。南利明の登場場面はバカバカしくて可笑しいものの、笑いはずっとさざ波のような感じではあるが、一時間強、退屈せずに楽しませてはくれる。終幕の、鬼警官が柔和になって街のみんなに好かれるようになり、子供たちにも大人気というオチも可笑しい→午前6時就寝。
6月7日(火) 朝8時半起床。マヌカハニー、白湯→葱のおつけ、ご飯、納豆、海苔→老父と昼食および買い物付き添い(〈なかじょう〉にてつけうどん、鶏ごぼう天、大根おろし。サミット、クリーニング屋)。往路にセブン-イレブンに立ち寄り本代支払い。復路にガソリン補給→『アラバマ物語』(原題『To Kill a Mockingbird』、原作:ハーパー・リー、監督:ロバート・マリガン。クラハン・デントン、メアリー・バダム、グレゴリー・ペック、ローズマリー・マーフィー、フィリップ・アルフォード、ジョン・メグナ、エステル・エヴァンス、リチャード・ヘイル、アリス・ゴーストリー、ルース・ホワイト、ポール・フィックス、ジェームズ・アンダーソン、スティーヴ・コンディット、キム・ハミルトン、キム・ヘクター、ブロック・ピーターズ、フランク・オーヴァートン、コリン・ウィルコックス、ウィリアム・ウィンダム、ロバート・デュヴァル。1962、米Universal Pictures)。人権を強く意識する弁護士が人種差別的偏見に拠らずに事件を解決しようとする法廷劇であり、米国南部の人種差別を主題にした物語でありつつ、一部始終を弁護士の娘の視点、すなわち子供の視点から描いている点が素晴らしい。子供が偏見を持たない父親の正義感を不器用に真似しながらも、自分の中にある差別的好奇心(隣人の精神薄弱者に対する)や周囲の大人や子供達の差別感との間で揺れ動きながら差別というものに対峙する姿勢を学んでいく姿を物語に織り込むことで、深い味わいと余韻が醸し出されたと思う。黒人に対する人種差別の問題がようやく解決に向かう第一歩を踏み出したような時代に、こうした映画が大ヒットしたという点、アメリカという国のすごさを感じる(と結論づけるには、当時のアメリカの人種差別事情や各地での状況をよく知らねばならないが)→焼き鳥(レバー、皮、正肉、つくね、ねぎま)、鶏唐揚げ、新玉葱とピーマンとトマトのサラダ、ニンジン新生姜ニンニクの浅漬け、葱のおつけ、鮭おむすび、ビール中瓶×1、金宮酎ハイ×3→食後即就寝→日付変わる前に起床→録画消化→『女の警察』(原作:梶山孝之、監督:江崎実生。小林旭、青江三奈、牧紀子、マネージャー、木浦佑三、内田稔、十朱幸代、小高雄二、神田隆、太田雅子、藤竜也、富田仲次郎、十朱久雄、加藤嘉、槙杏子、内田朝雄、加原武門、郷えい治、木島一郎。1969、日活)。小林旭映画としての特別な面白さよりも、梶山孝之の原作の面白さを求めるような一本と思った。小林旭の実力≠ヘ旧来の小林旭映画と同じ魅力があるものの、大物との直接対決はなく、肉弾戦もなく、また真剣にカッコつけてやってるのにどうにも笑えてしまう可笑しさもない。サスペンス映画の佳作として記憶に残りそうではある。映像としては、冒頭の銀座のホステスを次から次へと映す流れはなかなかだが、小林旭がわざと書類(しかし偽物)を奪われる場面は俯瞰だけではなく奪われる瞬間を地面でも撮ったほうがよかったのではないか→午前4時就寝。
6月8日(水) 朝9時起床。マヌカハニー、白湯→葱のおつけ、卵かけご飯、海苔→昼、浅草へ出立。混んでいる駅での乗り換えを避け、千代田線直通で北千住まで行き、そこからつくばエクスプレスで浅草へ→まず三社様にお参りし、〈梅園〉で豆かん買って、〈尾張屋〉で花巻そばを肴に御酒×1→本日の宿(いつものサンルート)に入って休憩。横になったが眠りはしなかった→夕方5時に宿を出て、すしや通りの〈穂里〉にてウインナー焼き、しめじのバター焼き、五目もんじゃ+あさり、焼きそば、明太子もんじゃ、ビール中瓶×2。以前来たのが四年前でそのとき初めてだったので、ウィンナー焼きから五目もんじゃまでは店の主に焼いてもらい、もんじゃに関しては焼き方を再指導いただく。で、明太子もんじゃは主監視の元自分で焼いてみたが、主ほど鮮やかには行かないが、ちゃんともんじゃ煎餅もこさえることができ満足。次回はもう大丈夫だろう。三笑亭笑三の色紙が飾ってあったから何年か前にお亡くなりになってしまいましたね、と主に話しかけたら、先代古今亭今輔はラジオ時代におばあさんだと思われていたとか、名跡を継いだ噺家も多いがつい先代を思い出して比較してしまうとか、そんな話を聞かせていただけた→食後合羽橋に寄って刃物店で包丁を見ていたら希望の品を聞かれたので、鯖くらいの大きさの魚なら自分で捌くので……と答えたところ、安来青鋼刃渡り165mmの黒打ち捌き包丁を勧められた。食指は動いたものの買うのはまた今度にしようと、その場は失敬→〈なってるハウス〉にて酒井俊(vo)、関島岳郎(tuba)、高岡大祐(tuba)。今回の酒井俊の来日=i三年ぶりになるのかな?)で最も楽しみにしていた組み合わせ。先日の成城学園前〈Cafe Beulmans〉(向島ゆり子、会田桃子)のときと同様、くつろいだ雰囲気で曲の説明も多く語りながらの演奏。いろいろ思い感じるところはあるが、音楽というのはつくづく、ひとつひとつの音の力だなあと実感。一緒に音を出す共演者の音とも有機的に影響し合い、時間の流れに沿ってそのときどきの場面に必要な音を出し、紡いでいく。それは音程だったりリズムだったり和声だったりというだけではなく、たとえば魂≠ニいったような、わかったようなわからないような言葉を持ち出さないと説明のつかない現象なのではないかと思う。もっとも、言葉にしようとするから魂≠ニいったような、わかったようなわからないような言葉を持ち出す必要が生じるのであって、ただ聴いて心震えるままに過ごせばよいのだとは思う。それにしても、「ヨイトマケの唄」には感動した→終演後もう一杯追加し(結局ジム・ビームのロックを、シングルにして四杯分)、俊さん高岡さんと談笑。適当なところでおいとま→〈一代〉に寄って本日の仕上げ。熱血親切女将もお元気そうでよかった。牛すじ煮込み一本と酎ハイ×2→明朝の食事にコンヴィニエンス・ストアでサンドイッチを買って帰館。帰館後即就寝。夜0時過ぎ。
6月9日(木) 朝8時起床。そこそこ宿酔→ミックスサンドイッチ(ツナ、卵、ハム)、テリヤキチキンサンドイッチ、珈琲→11時チェックアウト。ロビーのお手洗いでちょっと戻したら楽になった→宿の前の停留所から「めぐりん」(「ぐるーりめぐりん」という路線)なる循環バスで浅草橋へ。停留所から柳橋まで少し距離があり難儀したが、ひさびさに〈小松屋〉訪問し佃煮(生あみ、きゃら蕗、糸切り昆布、一口穴子)と煎り酒三本を購入→このあと御徒町までもめぐりんで移動と考えていたが、少し足の調子がしんどくなってきたので、タクシーで移動→〈フジ時計センター〉でBrova Accutronの電池交換→、御徒町まで来たら小津安二郎の顰みに倣って[]︎ とんとんとんかつ食ひたいな/蓬莱屋がなつかしい
と行きたいところだが懐具合を鑑みると〈井泉〉かなと、一応〈蓬莱屋〉の前を通って足を伸ばしたものの、〈井泉〉の前までたどり着いてもまだ宿酔治らないことに気づき、とんかつどころじゃないねとなって、結局弁当とカツサンドを買って帰ることにした。つい最近、番匠義彰『恋とのれん』を観ていたので、湯島から地下鉄に乗る前に、劇中の旅館〈まつおか〉のある路地の突き当たりの男坂を昇って天神様にお参りしてから帰ろうと思っていたのだが、さすがに歩くのがしんどくなってこれも断念→湯島から千代田線と小田急線を乗り継いで経堂。経堂からはタクシー→とりあえず、〈梅園〉の豆かんでおやつにしながら録画消化→風呂→キャベツとピーマンとトマトのサラダ、マッシュルームとニンジンとハムの炒め、新玉葱卵とじ、〈井泉〉とんかつ弁当、ビール中瓶×1→夜10時就寝。
6月10日(金) 朝4時半起床。白湯、マヌカハニー→『続・女の警察』(原作:梶山孝之、監督:江崎実生。小林旭、郷^治、西恵子、青江三奈、高品格、牧紀子、小山明子、河上喜史朗、丘みつ子、藤竜也、小山ルミ、玉村駿太郎、西城琴絵、木島一郎、長谷川照子、前田武彦、久遠利三、山田禅二、戸上城太郎、崔蘭郷。1969、日活)。あくまでもパッと観ての茫洋とした感想だが、前作よりも映画として豊潤な気がした。小林旭に少し若い頃の華が戻ったような気もするし、郷^治の存在感が他の出演作とひと味違う感じがするとか、青江三奈が画面に現れるのがいい間だったりとか、そんなようなことかもしれないし、あるいはタイトルの出方がカッコいいからかもしれない。全体的な印象は、前作同様、小林旭が中年期に差し掛かりそれまでの華がない分どうやろうかということを模索している、というものではあるが、たまにでも何度か繰り返し観たいな、と思わせられる何かはあったと思う→ニンジンとトマトのスープ、〈井泉〉カツサンド三切れ→朝食後二度寝→胡麻そば(うずらの卵×3、揚げ玉)→『女の警察 国際線待合室』(原作:梶山孝之、監督:丹野雄二。小林旭、左時枝、戸部夕子、岡崎二朗、牧紀子、川口恒、加賀邦男、高樹蓉子、大門節恵、渋沢詩子、青江三奈、由利徹、カルーセル麻紀、大堀早苗、久万里由香、明星雅子、天坊準、本目雅昭、柳瀬志郎、梅野泰靖、長門裕之、マイク・ダニーン。1970、日活)。本作にて監督交代。終盤の小林旭のアクションも含み、往年の日活アクションの輝きを取り戻したように見えるのはその所為、どうかは知らないが、娯楽映画としての艶は前二作より増していると思った。カルーセル麻紀と由利徹のやり取りとか、青江三奈の歌も出血サービスなら(多分)久万里由香のダンスも盛り沢山。とても軽めではあるがSM風味があるのも梶山孝之らしい。岡崎二朗は一応小林旭の相棒役なのにほぼ役に立っておらず、しかしそれがまた可笑しくてよい→風呂→賄い当番。本日は基本的に切っただけ→サラダ(キャベツ、ニンジン、ピーマントマト、酢、バルサミコ酢、胡麻油、塩、胡椒)、鴨燻製(辛子)、〈井泉〉カツサンドふた切れ、ビール350ml缶×1、ビール中瓶×1→以下不明。
posted by aokiosamublog at 23:00| 小ネタ/思考/日記