2022年09月30日
9月まとめ(21〜30日)
御殿場:墓参と創業明治三十年〈にく丸〉、茅ヶ崎:浪花節と土地のラーメン屋〈蘭〉と〈熊澤酒造〉、大磯:バカ話と貝出汁ラーメン〈海そば〉と〈井上蒲鉾〉、浅草:吉坊奈々福の会と〈歩盃〉、お笑い「Star People」セッション。
9月21日(水) 朝8時起床。白湯、マヌカハニー→わかめの吸い物、おじや(卵)→老父買い物代行(クリエイト、サミット)。サミットでは頼まれたものの数を間違え(ロースハム10枚を5枚、卵10ケを6ケ)、さらにレシートをサッカー台に置き忘れるという失態。金額については小銭を使おうとぴったり支払っていたので記憶していたのが不幸中の幸い→ガソリン補給し、近所の〈サミット〉に寄って赤葡萄酒買って帰宅→『梅里先生行状記 龍神剣』(原作:吉川英治、監督:滝沢英輔。大河内伝次郎、河津清三郎、月形龍之介、黒川弥太郎、清水将夫、山根寿子、花井蘭子、大川平八郎、深見泰三、小杉義男、横山運平、清川荘司。1942、紅系)、徳川光圀が立派な人間だったということを淡々と描いた作品と思うが、淡々とし過ぎていて山場を山場と感じなかったし、徳川光圀にさほど興味がないので、鑑賞に身が入らなかった。作品の所為ではないが、観終えて何も残らなかった→ネギトロ巻き×4、冷やし納豆そば(うずらの卵×3)、ビール中瓶×1→午睡→『男性・女性』(原題『Masculin, féminin: 15 faits précis』、原作:ギ・ド・モーパッサン『ポールの恋人』/『合図』、監督:ジャン=リュック・ゴダール。ジャン=ピエール・レオ、シャンタル・ゴヤ、ミシェル・ドゥボール、カトリーヌ=イザベル・デュポール、マルレーヌ・ジョベール、シャンタル・ダルジェ、メド・オンド、イヴ・アフォンソ、エヴァ=ブリット・ストランドベルイ、ビルイェル・マルムステーン、ブリジット・バルドー。1966、仏Columbia Films)。これまた解説が必要な映画。「音楽と音響と台詞、色彩、表面を流れる物語、それらが醸し出すリズムの心地よさと美しさ」を楽しめないことはないけれども、言葉による主張がいささか鼻につく。シネマ・ヴェリテの手法を採ったのも、そう思ってしまう所以かもしれないが、ジャン=ピエール・レオは別にして個々の役者が印象に残るわけでもないし、なにそれと驚くような場面や展開があるわけでもない(冒頭の殺人と終盤の焼身自殺を除けば)。『気狂いピエロ』のまとまりのよさ(まとまってないのもまとまってるうちに入る)の次に撮った作品と考えると、政治を描くことに傾いていくゴダール迷走の始まりとなる作品という見方もできようが、果たして→野菜炒め(トマト、ピーマン、つるむらさき、ニンニク)、ピザ二種(カラブレーゼ、ボロネーゼ)、ビール中瓶×1、赤葡萄酒×1/4→明日からの旅行の支度→シャワー→録画消化(『クイズ! 脳ベルSHOW』『笑点特大号』『寺内勘太郎一家』)→菊水堂ポテトチップス、チッチャロン・バラット、海苔、カツオ梅、ビール中瓶×1、御酒×2→午前2時頃就寝。
9月22日(木) 朝8時起床。白湯、マヌカハニー→ピザ(フンギ)1/2→出発時は晴。その後はどうなるか→10時半頃出立→東名高速若干渋滞し、午後1時近くに御殿場着。青木家墓参済んでから須藤家の墓参頼まれてたことを思い出し、父に電話で場所を確認して墓参。そんなこんなで冨士霊園を出るのが2時過ぎになり、〈名鉄菜館〉での昼は諦める→昼抜いたまま今夜の宿に早めに入り休憩→夕方、〈渡辺ハム工房〉で買い物ののち、前から気になっていた〈にく友〉が宿からすぐだったので晩。馬もつ煮、馬刺し、さくら鍋、棒餃子、ご飯セット、ビール一杯、御酒×2。これは当たり。満足→〈アスコットハウス〉で一杯とも思ったが、お腹一杯だし雨も降ってきたし、宿に戻る→即就寝。夜8時前。朝からほぼぶっ続けで四時間ほど運転した割には、右脚や腰は特になんともなかった。
9月23日(金) 朝7時起床。シャワー、珈琲→ポテトフライ、ウインナーソーセージ、トマト、クロワッサン、オレンジジュース。パン食は用意しているのに目玉焼きもスクランブルエッグもスープもないという中途半端さ→朝10時チェックアウト。道程はいろいろ検討したが、結局いつもの箱根超えて西湘道路で茅ヶ崎→11:30〈茅ヶ崎館〉着。早めにクルマ停めさせてもらい、近くの〈蘭〉で昼。ここも以前から気になっていたが、居心地よくて当たり。店内音楽がサザン・オール・スターズだったが、嫌いな音楽でも本場?で聴くと気にならないのが面白い。餃子、ラーメン、ビール中瓶×1。ラーメンが東京生まれにとって実に普通のラーメンだったのがうれしい→玉川奈々福独演会開場までしばし散策と休憩→開演時間前に会場の〈亀の子道場〉に行ってみるともう開いていたので入場。主催と運営の、〈ちんとんしゃん〉でお馴染みのお三人にご挨拶→さて本日の『玉川奈々福 気合いっぽん浪花節』の番組は、まず道場の館長である中川雅文七段、そして門弟である赤星光爵参段の空手演舞から。この会場ならではの趣向。続く玉川奈々福は、『浪曲 空手バカ!アラブ風雲録 岡本秀樹一代記』。中東からアフリカにかけて空手を広めた若き日の岡本秀樹の武勇伝を浪曲に仕立てたもの。原作とその作者のお名前を失念してしまったが(小倉孝保『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』であることを確認)、ただ一人の浪曲師とただ一人の曲師から、アクション映画や少年漫画さながらの絵と動きを伴った世界が展開されるのに驚いた。もちろん視覚的にはほぼ何もないところにそういう世界を繰り広げる藝があってこそで、初めて生で聴く玉川奈々福の実力を思い知った。岡本秀樹と面識があるという、中川雅文館長の思い出話も微笑ましかった。仲入後はお馴染み『仙台の鬼夫婦』。これまた堪能。もっとも以前から、夫がだらしないままならどうなるかを描いたほうが現代的ではないかとも思っていたのだが、本日は古典そのままの展開を、玉川奈々福の藝の力で存分に味わった。どちらのネタも、特に泣くような展開ではないところで、啖呵と節の勢いで泣きそうになった。そして初めて生で観る玉川奈々福の、華のあり様にも驚いた→会が跳ねたのち、ご挨拶もそこそこにいったん〈茅ヶ崎館〉に戻り、初めてのはなれに通してもらって、ビール、シャワー、そしてビール。持参のiPodとバード電子のスピーカーでマーティン・デニーをかけたら、はなれとその庭の虫の音、鳥の声に見事に調和→〈ピザヤショーチャン〉にて『玉川奈々福 気合いっぽん浪花節』の打ち上げにお邪魔。ルッコラのサラダ、蛸のマリネ、オリーブ、フライドポテト、ピザ数種、赤葡萄酒。楽しかったし、玉川奈々福さんとお話できたのも嬉しかったが、いささか酒が過ぎて喋り過ぎ反省→夜8時くらいにお開き。〈茅ヶ崎館〉に戻り風呂に浸かってから就寝。
9月24日(土) 朝8時起床→鮭塩焼き、ハムサラダ、酢の物、小鉢、ちくわ、おみおつけ、ご飯、香子→部屋に戻って休憩、読書→昼前、ぶらぶらと茅ヶ崎駅まで→相模線で香川、今回のご一行で〈熊澤酒造〉に集合し、敷地内の〈蔵元料理 天青〉にて会食。先付け(雨子と緑茄子の揚げ浸し利休餡かけ)、前菜(サーモンのオレンジマリネ、めかぶの酢の物 浅利と貝出汁ジュレ、冷製茶碗蒸し 茸の餡かけ、鶏生ハムの針野菜巻き 燻りがっこのタルタル)、副菜(からし蓮根真丈 挟み揚げ)、主菜魚(いさきの塩麹蒸し 柚子牛蒡餡かけ)、主催肉(豚肩ロースの吟醸粕味噌焼き 山葵と九条ネギのタレ)、御飯膳(湘南米、香物、味噌汁)、甘味(レモングラス香るプリン)、ピルスナー×1、天狗(クラフトジン)ソーダ割×1、秘蔵三酒ききくらべ、河童どぶろく×1。秘蔵三酒ききくらべもよかったが、粕取り焼酎から作ったクラフトジンの天狗がうまかった。みなさんもいい人ばかりで、少し人当たりはしたが、昨日今日とよい時間を過ごさせていただいた。感謝感謝→土産物やパンなどいろいろ買い、流れ解散的においとま→最後までご一緒になった今回の主催方々と茅ヶ崎駅で別れ、タクシーで帰館→休憩、シャワー。右脚が少し痺れてきたのでクスリ服用→〈茅ヶ崎館〉の下駄借りて、晩は昨昼も訪ねた〈蘭〉。ニラ玉、ウインナー炒め、焼きそば、ビール中瓶×1 1/2、レモンサワー×1。普通のものが普通にうまい、とてもいい酒場であることがわかった。ママさんはハタチのときに店を始めことしで53年めだそうだ。とてもいい人。また来よう→帰館、仮眠ののち、本館の男湯にゆっくり浸かる。疲れがすっかり抜けた→ビール中瓶×1飲んで、宿の寝床で瀬川昌久・蓮實重彦『アメリカから遠く離れて』読了してから就寝。午前1時頃。
9月25日(日) 朝8時起床→鯵の開き、豚しゃぶサラダ、インゲンの落花生味噌和え、冷奴(オクラ)、しらすおろし、なめこと油揚のおつけ、ご飯、お香子→10時に会計し、ロビーで珈琲いただきながら館主と歓談。〈茅ヶ崎館〉のような歴史のある建築物の保存について、国や自治体がいかに無策か、という話など。とりわけ固定資産税はかなりの重荷で、自治体によっては歴史や文化を重んじた負担軽減の施策を取るところもあるが、自治体ごとの税収などによって対応が異なるとのこと。やはりこれは国がどうにかしないと、地べたで培われてきた歴史が失われていくことになるのだなと、身近なところで言えば東京の老舗料理屋があっけなくなくなっていくことなどと考え合せ、実感した→あと、ロビーに全体の見取り図があったので、撮影させてもらう。しかし長屋風の三部屋は近々解体されてしまうとの由。二月に泊まっておいてよかった→〈茅ヶ崎館〉をおいとましてからちょいと大磯に寄り、まずは〈At GALLERY N' CAFE〉にてTしまご夫妻とバカ話。お元気そうでなにより→それから海のほうにぶらぶら歩いて、地図(Google Map)を眺めていて見つけた〈海そば〉で昼(潮そば)。「蛤、浅利、シジミたぶん70個分」の出汁が売りのラーメン屋で、日清食品の仕事をしている店主が週末だけ営んでいるとの由。人気店であり店主ひとりでの運営なので、ちょいと待たされるが、貝の出汁の塩梅にたいへん満足。一人前の量も私にはちょうどよい。ここは茅ヶ崎・大磯訪問の際はぜひ訪ねたい→いったん海岸に出て海に目を浸しつつ、海沿いをぶらぶら歩いて〈井上蒲鉾〉で買い物。それから取って返して〈At GALLERY N' CAFE〉に顔出してご挨拶し、あとは一路東京へ。海老名ジャンクションから綾瀬くらいまで少し渋滞したが、一時間半ほどの運転で帰宅→荷解きしてシャワー→旅行中の録画消化しながら菊水堂ポテトチップス、チッチャロン・バラット、〈熊澤酒造〉のチーズパンとフォッカッチャ(オリーブ油、塩)、ビール中瓶×2、白天狗ロック×2→早々に就寝。
9月26日(月) 朝9時半起床。白湯、マヌカハニー→朝は抜いて、開店と同時に〈ちとにこ〉。本日で閉店と知り憮然、残念。私からしたら、酒場以外で地域の方々と触れ合える貴重な場所になるなと思ったのだが。ハーフちとにこカレー、ポテトフライ、野菜素揚げ、まぼろし!ちとにく、ハイボール×2。店主は十月末に乱歩『人間椅子』が原作の芝居に出演されるそうなので、帰宅後早速予約→午睡→起きて酒粕パンと牛乳。そして旅行中さぼったギターの練習→晩のスープのみ製作→シャワー→録画消化→サラダ(キャベツ、トマト、ピーマン)、いちぢく生ハム巻き、サラミ、鶏生ハム、鹿コンビーフ、茄子と玉葱のチキンコンソメスープ、フォカッチャ、鶏レバーペースト、ビール中瓶×1、赤葡萄酒一杯、御酒×2→早々に就寝。
9月27日(火) 朝10時起床。白湯、マヌカハニー→鹿コンビーフ、茄子と玉葱のチキンコンソメスープ、フォカッチャ、鶏レバーペースト→『彩り河』(原作:松本清張、監督:三村晴彦。平幹二朗、汐路章、真田広之、渡瀬恒彦、吉行和子、夏木勲、三國連太郎、石橋蓮司、沖直美、米倉斉加年、伊東達広、阿藤海、根上淳、佐藤允、名取裕子、金子研三。1984、松竹)。井川正治郎(平幹二朗)・山口和子(吉行和子)・高柳秀夫(夏木勲)の確執と、山口・高柳を裏で支配する銀行社長・下田忠雄(三國連太郎)、その支配関係を暴こうとするトップ屋・山越貞一(渡瀬恒彦)によって主に織り成される前半は話がどう転がるのか興味が尽きなかったのだが、山口和子が殺されてそのクラブのママの席に増田ふみ子(名取裕子)が着いてから、なんとなく失速の感あり。増田ふみ子の位置づけがはっきりしないし、クラブの配車係・田中譲二(真田広之)が実は自分の親が下田によって死に追いやられたという設定も、後半でいきなり語られるのは取ってつけたようである。そして下田の存在も中途半端で、ただ田中によって刺殺されるだけでは、この物語が何のために描かれたのかがよくわからない(かつての恋人と友人を殺された井川の立場がない)。結末は原作と異なるそうだが、原作がそもそも失敗作だったのではないかと思わせてしまうような出来と思った→『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』(監督:島田陽磨。林恵子、林真義、中本愛子、伊藤孝司、荒井瑠璃子、佐藤正夫、山崎寅吉、盧秀吉、高蜿r男、朴正鎮、白石房江(仮名)、鄭光洙(チョン・カンス)、鄭日順(チョン・イルスン)、朴日和(パク・イルファ)。2021、日本電波ニュース社)。「在日朝鮮人の帰還事業」によって北朝鮮に渡った日本人女性(在日朝鮮人の妻となった女性たち)とその家族を追ったドキュメンタリー。「帰国事業」そのものは朝鮮総連が推進したもの(帰国運動、帰還運動)ではあるが、日本政府が国にとってお荷物となっていた在日朝鮮人(ただし多くは南出身の人たち)を朝鮮半島に帰してしまおうという乱暴な施策でもあって、本作では「閣議了解に至るまでの内部事情」という文書に書かれた「在日朝鮮人は犯罪率が高く(青木註:日本人が0.5人/1,000人のところ3/1,000人)、また生活保護を受けているものが19,000世帯81,000人(略)希望するならば帰還させるという声が中央、地方の一般与論となり与党内でも圧倒的となった」という一文や、当時の国務大臣(おそらく法務大臣牧野良三)の「これは帰すのがほんとうだ。あんな連中を日本に置くことは皆さんほんとうに困りますね。そして食わせなければならぬでしょう。そしてこんな事件が起きるから、一日も早く帰したい」という発言を引用しつつ、日本政府の対応を問題視する視点を一応は置いている。ただし、社会党や共産党が「北朝鮮の社会主義を宣伝することで、日本における政治的影響力の拡大を狙った」(Wikipedia「在日朝鮮人の帰還事業」)という側面には触れていない。触れてはいないが、いずれにせよ北朝鮮に渡った(そして帰れなくなった)女性たちもその家族も、「国」の犠牲者だという点が、強調せずとも伝わってくるような作りにはなっていた。そして一度自分の判断で行動した人間に対しては、容赦なく「自己責任」という言葉だけが向けられる現代日本の闇(闇だと思う)を見せることも忘れていない。いろいろな感想はあるが、優れたドキュメンタリーであるとは思った→晩のスープのみ製作→サラダ(キャベツ、トマト、新生姜、塩昆布)、井上はんぺん刺身、ウィンナーソーセージ、鶏生ハム、鹿コンビーフ、潰しじゃがいもとニンジンの鶏ガラスープ(玉葱、ニンニク、生姜)、チチニエリ、ビール中瓶×1、金宮酎ハイ×1、白天狗×1→夜10時就寝。
9月28日(水) 朝9時起床。白湯、マヌカハニー→目玉焼き、トマトソテー、潰しじゃがいもとニンジンの鶏ガラスープ、トースト→『影の車』(原作:松本清張『潜在光景』、監督:野村芳太郎。加藤剛、岩下志麻、小川真由美、岡本久人、野村昭子、小山梓、岩崎加根子、滝田裕介、稲葉義男、芦田伸介。1970、松竹)。前回観たとき(2020年1月31日)は、「衝撃度は小さかった。回想の場面のハレーションを起こしたような映像は、そうした話の衝撃の小ささを補う意味があったのだろうか」という感想を記しているが、改めて観ると、浜島幸雄(加藤剛)がガス漏れに苦しみながら悪夢に苛まれる場面での子供(岡本久人)の用い方など、かなり印象に残った。小磯泰子(岩下志麻)の、岩下志麻はそういう芝居が多いように思うが、何も深くは考えていないのにそれが却って底知れない闇を感じさせるような芝居が、映画全体の救いのなさに大きく作用しているようにも思った。が、その一方で、子供のいる女と深い仲になるときは子供を除け者にしないよう細心の注意を払わなければならない、という教訓として見ると、「底知れない闇」「映画全体の救いのなさ」と考えていたことが拍子抜けするような感じもある。あと野村芳太郎としては『鬼畜』は本作と関連する意識があったのかなと思ったが、果たして→シャワー→夕方浅草に出て、まずは〈尾張屋〉で一杯。松茸土瓶蒸し、花巻そば、御酒×1→三社様にてお参りがてら休憩→木馬亭にて『奈々福×吉坊二人会「みちゆき」 ゆきゆきて第四夜』見物。第四夜の口上は「現世は騙し騙され移り行く」で、演目は下記の通り。
春風亭いっ休・・・・・弥次郎
桂吉坊・・・・・・・・三枚起請
玉川奈々福・・・・・・狸と鵺と甚五郎(曲師:沢村豊子)
(仲入り)
桂吉坊・玉川奈々福
・・・・・・・・・・濃ゆいトーク「お題知れず」
ずいぶんひさしぶりに聴いた吉坊は、〈さばのゆ〉で何度か聴いた十年弱前と比べて、男っぷりが上がった印象。声も太く低くなっていた。上方の『三枚起請』は細かいくすぐりのような笑いが多く、東京落語に親しんだ身にはもう少し刈り込んでもいいんじゃないかなという印象だったが、それはそれで貴重な体験。ただ、最終版の
−−−
「女郎は客を騙すのが商売、それを文句言うんじゃねぇ。起請を何本も書くような汚ねえまねするねぇ。”嫌で起請を書く時は熊野で烏が三羽死ぬ”って言うんだ」
「あ〜、そうかい。あたしは嫌な起請をどっさり書いて世界中の烏を殺したいよ」
「烏を殺してどうするんでぇ」
「朝寝がしたいよ」
−−−
のくだり(引用は吉坊の語りを聞き取ったものではなく、ネット上にあった『三枚起請』のあらすじ。 http://sakamitisanpo.g.dgdg.jp/sannmaikisyou.html )の最初の部分でほんの少しだけだが言い淀みがあったのが惜しい。ここは「朝寝がしたい」までだーっと流れてほしかった。
奈々福『狸と鵺と甚五郎』は「騙し騙され」というには朗らかな演目だが、それはそれで面白かった。よくよく考えれば百姓与平は留五郎にあとを頼んだらすぐに逃げるのだから最初から逃げられたのではないかとか、本物の甚五郎が現れはするが戯れに鵺を彫りはするが宿に進呈するくだりは描かれないとか、おや、と思う箇所があるにはあったが、聴いている最中はただただ奈々福の節と啖呵の心地よさに身を委ねていただけだった。沢村豊子の相三味線も、出しゃばってくることはまったくないが確かに奈々福を支えていて、年月に磨き上げられた藝というのはすごいものだと感動。
仲入り後の「濃ゆいトーク」は、最近吉坊が龍笛を稽古しているという話から和楽器に関するいろいろ。宗教的儀式に使われていた楽器という話から、宗教の一部として生まれた説法が次第に落語や浪曲などの藝能へと変化していった話に至ったところで、なるほどと思いつつ、キリスト教では音楽の持つ機能をそれほど広げなかったという話になったところで、ゴスペルとして音楽を解放した結果がR&Bやソウル、ファンクに結びついて行ったのかななどと夢想した。その辺はまた別途参考書などに当たって考える必要はあろう→今回呼んでくれた(席もよういしてくれていた)チャーリーにご挨拶しおいとま。今回は奈々福さんにはお会いできなかった→先月初訪問した〈歩盃〉にて一杯。女将さんが我々のことを覚えていてくれてうれしかった。普通のものが普通にうまくて、居心地のよい酒場。よい店を紹介してもらった。焼き鳥もも×1、焼き鳥レバー×1、煮込み、焼きたらこ、ビール中瓶×1、御酒×3→田原町から銀座線に乗ったら、稲荷町からチャーリー乗ってきてびっくり→経堂からタクシーで帰宅。即就寝。午前1時頃。
9月29日(木) 昼前起床→潰しじゃがいもとニンジンの鶏ガラスープ、鹿コンビーフ、鶏レバーペースト、スクランブルエッグ、トースト→午後、老父の通院付き添い(近所のかかりつけ医)。退院以後あまり体調は変わらないとのことだが、医者に最近の調子を話したところ、それはいい感じですね、百まで生きますよと言われた、とのことだった→帰宅して映画観ながら一杯。『恋人のいる時間』(原題『Une femme mariée: Suite de fragments d'un film tourné en 』、監督:ジャン=リュック・ゴダール。マーシャ・メリル、ベルナール・ノエル、クリストフ・ブルセイエ、フィリップ・ルロワ、ロジェ・レーナルト、ジョルジュ・リロン。1964、仏Columbia)。「イタリア映画の女優のように/わき毛を伸ばせよ/ハリウッドのように/剃ってるほうが好き」といった愛人関係の会話に映画を忍ばせてくるところとか、主人公シャルロット(マーシャ・メリル)のナチスへの無知無関心、コマーシャリズムの台頭への批判あるいは違和感という要素はわかったし面白くもあったが、全体的に物語のポイントがどこかは判然としなかった(判然としないといけないわけではない)。場面場面が専らフェイドアウトというか暗転というかでつながっていく映像のリズムにも、なんとはなしに違和感を感じた。あとは終幕近くに出てくる「hi fidelity」の意味合いか(字幕は失念したが、一般的なオーディオ用語として訳されてはいなかった)。放映チャンネル(ザ・シネマ)の惹句には「愛人がいる人妻の24時間をとことん解剖!ジャン=リュック・ゴダールの遊び心があふれる映像コラージュ」とあるが、それが本質ではないような気もするし、それの面白さは感じなかった。少し掘ってみる必要はあるな→さつまあげ、コロッケ1/2、キーマカレーコロッケ1/2、メンチカツ1/2、菊水堂ポテトチップス、チッチャロン・バラット、鹿コンビーフ、トマトとセロリのサラダ、焼うどん(ウィンナーソーセージ、ニンジン、玉葱、ピーマン、ニンニク)、ビール中瓶×1、ホッピー×4→食後即就寝→深夜起床→『わるいやつら』(原作:松本清張、監督:野村芳太郎。松坂慶子、片岡孝夫、小沢栄太郎、藤真利子、米倉斉加年、梶芽衣子、宮下順子、藤田まこと、西田珠美、緒形拳、佐分利信、渡瀬恒彦。1980、松竹)。宮下順子の業の深い感じがたっぷり味わえるが、それだけと言えばそれだけの映画と思った。片岡孝夫のダメボンぶりも堂に入っていたが、他の役者もそれぞれ芝居の藝と存在感を見せていたものの、無駄遣いという印象のほうが強い(特に終盤に出てくる緒形拳の刑事、渡瀬恒彦の弁護士、佐分利信の判事などは、なにかありそうと思わせるだけにもったいない)。これは原作にも起因することかもしれないが、病院の経営不振を愛人から巻き上げる金でなんとかするというのも無茶だし、そこから若手美人ファッションデザイナー(松坂慶子)への恋慕へと話が進むのも金なのか色なのか目的が判然とせず、そして松坂慶子がそんなに(終幕で刺されるほどの)悪女にも見えない。ということで、本作の描く世界に乗りきれないまま鑑賞は終わってしまった→サラミ、鹿コンビーフ、チッチャロン・バラット、白天狗ソーダ割×3、ホッピー×1→午前4時過ぎ就寝。
9月30日(金) 朝8時半起床。白湯、マヌカハニー→老父買い物代行(郵便局にて記帳、サミット、洗濯屋、銀行記帳)。記帳業務については、三鷹駅前まで行って済ませるのと、行きがけの郵便局と杏林病院内のATMをハシゴするのとどちらが効率的か悩む。時間も手間も同じようなものか→ガソリン補給して帰宅→今井和雄新譜宣伝文(B電子制作)の見直し→きつね月見コロッケそば→夕方クルマで三軒茶屋。二ヶ月ぶりの〈Stage PF〉。すなわちドラム叩くのも二ヶ月ぶりで、間にTYOの稽古でカホンは叩いたが、やはりドラムセット二ヶ月ぶり、というかその前も全然やってなかったので、劣化はひどい。そろそろ部屋での基本練習も再開しよう。『Star People』のコード進行だけ借りたブルース・セッションでは、アルトサックスのM岡さんがトランペットに挑戦したのが可笑しかった。PFでビール350ml缶×2。〈富士そば〉で醤油ラーメン食べて帰る→シャワー→茄子ピーマン味噌炒め、長芋唐揚げ、鹿コンビーフ、舞茸と油揚のおつけ、まつのはこんぶ冷や茶漬け、ビール中瓶×1、ホッピー×1→午前1時就寝。
posted by aokiosamublog at 23:00| 小ネタ/思考/日記